クロソイ、アカイカ類等の資源生物における
DNA多型の利用法の開発
資源評価部 上席研究官
(生物機能部 細胞生物研究室・分子生物研究室)
背景・目的
1. 1970年代にインド洋及び太平洋の熱帯海域で我が国が実施した"ニタリクジラ特別捕獲調査"により、未知のヒゲクジラの存在を示唆する標本が得られた。
2. 1990年代に欧米の研究者が、店頭の鯨肉(韓国)や解体後海中に廃棄された鯨骨(フィリピン)から異質なミトコンドリアDNAシーケンスを報告した。
3. IWC(国際捕鯨委員会)の反捕鯨勢力はこれらの個体やDNAシーケンスを全てニタリクジラの変異とみなし、分類学的不確実を理由にクジラ資源の開発阻止を計った。
成果
1. 上記の1がナガスクジラ属の新種であることを確認し、Balaenoptera omurai (和名:ツノシマクジラ)と命名した(Nature 426: 278-281)。
2. これまで同一種と誤認されてきたB. edeni B. brydei (ニタリクジラ)を骨学と分子の新たな証拠に基づいて別種に分離し、上記の2が主としてB. edeni カツオクジラ)であることを明らかにした。
ツノシマクジラの外観の特徴
・左胸部だけが黒く、胸びれの裏は灰色でなく白い。
・うね(約90本)は細長く、へそに達する。
・最大体長はカツオクジラとほぼ同じ約12 m。
波及効果
1. 鯨類に限らず、博物館の動植物標本や店頭販売商品の種の同定にDNA分析が極めて有効であることが理解される。
2. ナガスクジラ属の分類における長年の誤認や混乱が解決されて種や系群の分布に関する知見が修正され、より正確な資源評価が可能となる。
3. 我が国の調査捕鯨の科学的貢献が国際的に評価され、我が国の主張への理解が深まる。

ミトコンドリアDNA調節領域全長の塩基配列にもとづくナガスクジラ属8種の近隣結合系統樹(外群:セミクジラ)
連絡先
和田志郎
協力機関
岩手県立博物館・国立科学博物館

nrifs-info@ml.affrc.go.jp

目次へ

top中央水産研究所日本語ホームページへ