黒潮域における数値モデルを併用した海況モニタリングシステムの開発
海洋生産部 海洋動態研究室
背景・目的
1. マアジは2-4月に東シナ海の台湾周辺海域で主に産卵するとされるが、卵稚仔の輸送・生残過程については未だ不明な点が多い。
2. マアジの加入量予測の精度向上には、稚仔魚が太平洋側、日本海側、そして九州沿岸へと配分される割合を求めることが不可欠であり、課題では数値モデルで海況を推定し、稚仔の配分量を予測するシステムを開発する。
成果
1. 3次元海洋大循環モデルに格子形成法を適用して東シナ海を中心とした日本周辺海域の高解像度化を図った。陸棚縁辺の前線渦、黒潮分枝流、大陸系冷水の張り出しなど微細な現象を解像できる。
2. 調和解析を利用した潮汐除去法を適用して陸棚上の衛星海面高度場もモデルのデータ同化に利用することで、前項と併せた改良により、黒潮流路については30日先、対馬暖流流量については20日先まで予測可能になった。
3. マアジ仔魚採取調査によると、2001年2月は3mmNL未満の仔魚が黒潮北縁に沿って分布していたが、2002年の2-3月は台湾北東海域に固まって分布していた。モデル流動場による疑似卵放流実験は現場の仔魚分布とほぼ同じ分布様式を再現し(図1)、両年の分布の違いとして、2001年は2002年と異なり、台湾北東海域に正偏差の渦が停滞していたため、黒潮分枝流に乗って北上した卵が時計回りの循環流の影響で黒潮へ引き込まれて速やかに北東方向へ流されたことに一因があると考えられた。
図1. モデルで推定した流動場に基づく(a)2001年と(b)2002年の2月15日から2月20日までの粒子放流実験。
図の黒点は台湾北東のに粒子を放流して重ね合わせたもので、背景は2月15日0時のモデルで推定した表面水温分布を示す。
波及効果
1. 卵・稚仔輸送モデルについては生残過程の定式化が今後の課題であるが、海況モデルは、マアジに限らず、スルメイカ、マイワシ等の卵・稚仔の輸送経路の推定にも利用可能で応用範囲が広い。
連絡先
小松幸生
協力機関
京都大学大学院農学研究科、西海区水産研究所

nrifs-info@ml.affrc.go.jp

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