卓上式ビデオプランクトンレコーダー(B-VPR)によるプランクトンの大量計測から見えること | |
研究課題名:VPRによる黒潮・黒潮続流域の動物プランクトン群集構造の長期変動解析 実施年度:平成19~23年度 |
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海洋生産部 物質循環研究室長 市川 忠史 |
環境変動がマイワシなど浮魚資源に与える影響を解析するためには、魚類の直接の餌料となる動物プランクトン、特にカイアシ類の個体数やサイズ組成のデータが不可欠です。しかし、動物プランクトンのデータは、計測に時間と労力が必要なため利用可能な情報は限られていました。卓上式ビデオプランクトンレコーダー(B-VPR)を用いて、小型浮魚類、特にマイワシ資源が大きく変動した1970年代から1990年代にかけての大量の動物プランクトン試料を計測し、餌料や環境が資源変動にどのような影響を与えていたのか明らかにすることを 目的としています。
中央水産研究所では1940年代からマイワシなど小型浮魚類を対象とした卵稚仔調査を実施していますが、1960年代以降に採集された大量のプランクトン試料が保管されていました。そこで中央水産研究所が開発してきたB-VPR(図1)を用いて、この大量の試料の計測を行いました。
現在もマイワシ主産卵場となっている土佐湾を含む四国沖を中心に、この1年間で1000サンプル以上を分析しました(図2)。その結果、黒潮の内側・外側に限らず、1970年代以降、1990年までカイアシ類の個体数が減少していること、2mm以上の大きなサイズのカイアシ類とそれ以下のサイズで変動パターンが異なっていたことが分かりました( 図3)。今まで潮岬沖などの限られた観測点で同様な結果が報告されていますが、今回の結果から黒潮周辺海域で一般的・広域的に起きていた現象であることが示されました。(これはカイアシ類の長期変動が気候変動の影響を受けている可能性を示唆した過去の報告を裏付けるものです)
資源変動予測の精度の向上、モデルを用いた解析へのパラメータの提供、さらにプランクトンデータベースとして公開していくことも検討しています。
市川ほか(2009)Bench-top VPR(B-VPR)を用いたホルマリン液浸動物プランクトン試料の計測. 水産技術. 1(2). 13-23.