我が国周辺海域海底土におけるプルトニウム同位体の分布
[要約]
我が国周辺海域海底土中のプルトニウム同位体の分析を行い,その基準かされた蓄積善良において明瞭な海域差が存在することを見いだし,また同位体比からフォールアウト起源であることを明らかにした。
中央水産研究所 海洋生産部 海洋放射能研究室連絡先045-788-7654
推 進 会 議中央ブロック専  門物質循環 対  象       分  類研  究

[背景・ねらい]
 
 近年の内外における原子力施設の著しい増大また旧ソ連・ロシアによる日本海などへの核廃棄物の投棄による我が国周辺海洋環 境の新たな放射能汚染の危険性が生じている。これらの原因による汚染人工核種の中で,Puの同位体はその長い寿命,また放出するα線に よる高い毒性によって,最も注目されている核種である。海底土は海洋に降下または流入した人口核種が海洋における様々な過程を経て終 局的に行き着く場であり,放射能の濃度も比較的高く,海域の汚染を評価する上で極めて有効な試料である。我が国周辺の諸海域から採取 した柱状海底土資料のPu同位体の放射化学分析を行い,分布の海域間による比較,またその起源が同一のものであるかの検討を試みた。

[成果の内容・特徴]
 
 同位体の中で検出されたのは238Pu及び239,240Puである。得られた結果を図に示した。図1は海底土 に蓄積した239,240Puの全量(インベントリー)を図2は自然放射性核種の210Pb(過剰210Pb)で基準 化した全量を,図3は238Puの全量の比をそれぞれ海域間で比較したものである。
239,240Puの全量では,太平洋側北緯30度以南沿岸海域と他の海域の間には差が認めら れた。日本海沿岸海域(北緯35~45度)は分布の広がりが最も大きく,また最大の値が観測された(図1)。
239,240Puを過剰210Pbで基準化して比較をすると,太平洋側北緯35度以北沿岸 海域>日本海沿岸海域>太平洋側北緯30~35度沿岸海域>太平洋北緯30度以南沿岸沿岸海域で差が認められた。これらのことは,沈降粒子 による影響を除外すると,239,40Puの海洋への加入が北緯35度以北において最も多いことを示しており,北緯40~45度区域で最 大となるフォールアウトによる大気からの降下量の傾向とほぼ一致している(図2)。
238Pu/239,40Pu比は概ね0.01~0.05の間にあった。Puの同位体比は核燃料とし ての燃焼度で変化し,上記の燃焼度の低い核兵器用燃料の範囲にほぼ該当する。このことは,我が国周辺海域に分布するこれらPu同位体は ,昭和30年代をピークとする大気圏内核実験を起源としており,原子力施設や核廃棄物の投棄に由来するもではないことを示している(図3)。

[成果の活用面・留意点]
 
 本研究で得られた我が国周辺諸海域の海底土におけるPu同位体の存在量また同位体比に関する知見は,将来原子力施設の事故・ 核廃棄物の投棄などによる新たな寄与が生じた場合,その影響を評価する上で極めて有効な役割を果たしうる。

[その他]
 
研究課題名海底土中の人子放射性核種の水平及び鉛直分布に関する研究
予算区分近海海産生物放射能調査費
研究期間平成8~11年度
研究担当者鈴木頴介
発表論文等第41回日本放射線影響学会講演要旨集p101,平成10年