魚類体表の溶菌性プロテアーゼの発見
[要約]
広くウナギ目魚類の体表組織内に保持されている生体防御プロテアーゼを発見した。さらに生体防御プロテアーゼによる魚病細菌の分解(溶菌)メカニズムを明らかにして魚類の体表粘膜における病原細菌の侵入阻止機構を推定した。
中央水産研究所 生物機能部 生物特性研究室連絡先045-788-7645
推 進 会 議中央ブロック専  門魚介類機能 対  象うなぎ 分  類研  究


[背景・ねらい]
 
 水中で生活する魚類は体表を粘膜組織で覆われおり、そこには水からの病原体の侵入を防ぐ機能(生体防御能)が存在する。また 、最新の研究では生体防御能だけでなく地球温暖化や酸性雨から発生する環境ストレスより体を守る機能(環境適応能)も兼ね傭えているの が明らかになっている。魚類体表の生体防御機構は病原体の侵入や環境ストレスに対して素早く反応する特徴をもつが、この反応は多くの 分解酵素により進行している。これまで糖分解酵素や脂質分解酵素に関する研究ぱ行われているが、主役であるタンパク分解酵素(プロテア ーゼ)に関する研究成功例は未だない。この研究では、環境適応能が高く世界的な水産重要魚種であるウナギ目魚類から体表粘膜に分布する 生体防御プロテアーゼを発見し、その生体防御能やストレス応答性を明らかにした。

[成果の内容・特徴]
 
ウナギ体表プロテアーゼの検索と同定を行った結果、ニホンウナギ表皮組織に4種のプロテアーゼを発見 した。これらの表皮プロテアーゼは種によって蛋白分解活性に差があるものの、多くのウナギ目魚類に保持されていることが判った。
ストレス試験(温度、細菌感染等)で表皮プロテアーゼのストレス応答性と表皮組織の形態変化を調ぺた 結果、表皮の粘液細胞と梶棒状細胞に分布する2種の表皮プロテアーゼ(カテプシン)がストレスに応答して分泌されていることが判った。
ウナギ表皮から単離したカテプシンは多くの魚病細菌を溶菌し、その機構ば細菌外膜タンパク質の分解 であった。これらの結果から、魚類の体表粘膜での病原菌の侵入阻止は1.カテプシンの攻撃で外膜に穴が開いた病原菌が浸透圧作用で崩れ る、2.穴から他の生体防御因子が菌体内に侵入し溶菌作用を促す、によると推定した。

[成果の活用面・留意点]
現在、魚類の生体防御因子は増養殖現場で「健康指標」や「有用形質指標」として利用されている。しかし検出感度や定量性等 多くの技術的問題を抱え適用範囲が限られている。一方、本研究で発見した体表プロテアーゼぱ微量かっ定量的に検出可能であり、この特 徴を活用した稚仔魚や天然魚の再生産過程での「生残率指標」として適用を期待できる。

[その他]
 
研究課題名魚類体表部の蛋白質分解系の解明
予算区分経常研究
研究期間平成10年度(平成8~9年度)
研究担当者荒西大士
発表論文等 Epidermal proteases of the Japanese eel (Aranishi & Nakane),Fish Physiology and Biochemistry,16号,471-478,1997.
 Epidermal response of the Japanese eel to environmental stress(Aranishi et al.),Fish Physiology and Biochmistry,19号,197-203,1998.
 Fluorescence localization of epidermal cathepsins L and B in the Japanese eel(Aranishi et al.),Fish Physiology and Biochemisty,19号,205-209,1998.
 Lysis of pathogenic bacteria by epidermal cathepsins L and B in Japanese eel.(Aranishi),Fish Physiology and Biochmistry,20号,1999.
 Pssible role for catehpsins B and L in bacteriolysis by Japanese eel skin.(Aranishi),Fish & Shellfish Immunology,9号,1999.