河川において淡水魚を豊富にする環境要因
- [要約]
- 魚のすみやすい川づくりを進めるために,河川において水深,流速,岸の状態や隠れ場所などの環境要因と生息する淡水魚を調べ,両者の関係を解析することによって,淡水魚を豊富にする環境要因を明らかにした。
中央水産研究所・内水面利用部・魚類生態研究室
[連絡先] 0268-22-0594[推進会議]内水面(中央ブロック)水産業関係試験研究推進会議[専門] 内水面;資源生態[対象] 淡水魚[分類] 研究
- [背景・ねらい]
- 河川では護岸改修などなどにより淡水魚が減少しており,一方漁場としての価値を高めるために,魚の隠れ家を設けたり,岸部など
を自然の状態に近づける工夫が行われている。しかし,どのような環境要因を改善すればよいのかについての研究はほとんど行われていな
い。そこで,淡水魚の種数や種多様度,総個体数,マイオマスなどが,どの環境と関係しているのかを調査した。
[成果の内容・特徴]
- 長野県農具川の26地点(1地点=約100m2)において,10月に電気ショッカーを用いてすべての魚を再捕し,その種類,
種多様度,総個体数,バイオマス(総重量)を調査した。
- 環境要因として,水深,流速,底質のほか,魚の隠れ場所や岸部の自然度など14項目を計測し,生息していた魚類と対応させた。
- 採捕された魚類は,合計15種類,1,745個体であった(表1)。
- 淡水魚を豊富にするうえでもっとも重要な環境要因は最大水深であり,深い淵があることによって魚の種類,総個体数,バイオマスが
増加した。護岸が自然であることによって,バイオマスも増加した。一方,種多様度は,流速が大きかったり,植物がつくりだす魚の隠れ
家が多いほど高くなった(図1)。
[成果の活用面・留意点] 同様の調査を,異なる季節や河川で行うことによって,結果の信頼性を高める必要がある。
実際に,最大水深や護岸を魚がすみやすいように改善することにより,どれだけ淡水魚が豊富になるのかを調べる必要がある。
[具体的データ]
[その他]研究課題名:河川の生物群集の多様性維持機構の解明予算区分 :経常研究期間 :平成7~9年研究担当者:片野修;細谷和海;井口恵一朗発表論文等:Colonization of an artificial stream by fishes and macro- invertebrates, Ecological Research, (in press)
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