「おがさわら丸」航走水温計による伊豆・小笠原海嶺域の表面水温変動


[要約]
東京~父島間の定期船「おがさわら丸」の航走水温データから水温フロントを抽出し、その時空間的変動を調べた。その結果、黒潮流路付近を水温フロントが伝播していく様子が観察され、その移動速度を見積もることが出来た。

中央水産研究所・海洋生産部・変動機構研究室

[連絡先] 045-788-7648[推進会議]中央ブロック水産業関係試験研究推進会議[専門]  海洋構造[対象]  [分類]  研究

[背景・ねらい]
 潮岬以東の黒潮は時空間的に極めて複雑な変動を示す。その要因の一つとして伊豆海嶺の存在が指摘されているが未だ不明な点が多 い。しかも、数日以下の短期的な海況の変動は伊豆諸島海域のマサバの産卵場形成やトビウオの漁場形成と関係が深い。この海域の海況並 びに生物資源の変動機構を把握するためには高頻度かつ継続的な海洋観測が不可欠である。そこで、黒潮流路変動に伴う水温フロントの変 動を把握することを目的として、東京~父島間の定期船「おがさわら丸」に水温計を設置し、1983年から1997年まで表面水温の連続観測を 行った(図1)。本フェリーは一週間で東京~父島を一往復している。

[成果の内容・特徴]

  1. 航路の高緯度側では、黒潮流路の南北変動に伴って水温偏差と潮位偏差の間に強い正の相関が見られた(図2)。
  2. おがさわら丸の航路に当たる海域は、図3に見られるように海面水温の緯度方向の勾配の特徴から、負の温度勾配を示す部分が多数存 在する黒潮流軸の北側、負の温度勾配を示す部分がほとんどない黒潮流軸の南側から30~29°Nまでの区間、負の温度勾配が再び出現する 30~29°N以南、の3つに大別できた。
  3. 1984年前半のように黒潮流路が伊豆海嶺の東側を北上する( C 型流路)時期には、航路上を水温フロントが南から北へ伝播する現象が 見られ、その移動速度は航路上に投影すると約 3.9 浬/日となることが見積もられた(図3)。

[成果の活用面・留意点]
 伊豆・小笠原海嶺域を八丈島以南まで含めて長期間連続観測した例は他にほとんどなく、近年黒潮が八丈島の南を直進型で通過する傾向 にあることを考えても、この観測結果並びに解析結果はこの海域の海況変動を把握する上で有効である。当海域における水温の短期変動は 、トビウオ、さば類の漁場形成・移動に大いに関連していると考えられているので、漁場形成・移動と対比させることによって、両者の対 応関係が明らかになると期待される。一都三県をはじめとする地方自治体との共同研究が必要である。

[具体的データ]




[その他]研究課題名:定期船による東京~父島間の表面水温観測予算区分:黒潮の開発利用調査研究研究期間:昭和58年(1983年)~平成9年(1997年)研究担当者:小松幸生、瀬川恭平(現遠洋水産研究所)、友定 彰発表論文等:                          瀬川恭平、友定 彰(1983):定期船による東京~父島間の表面水温観察、黒潮の  開発利用調査研究成果報告書(その6)、318ー322.                 瀬川恭平、友定 彰(1985):伊豆・小笠原諸島域の水温変動、1985年度日本海洋  学会春季大会講演要旨集、21ー22.  瀬川恭平(1988):伊豆・小笠原諸島域の水温変動、1988年度日本海洋学会秋季大  会講演要旨集、208.  瀬川恭平(1989):伊豆・小笠原海嶺域における表面水温変動の研究ー黒潮フロン  トの変動についてー、昭和62年度黒潮の開発利用調査研究成果報告書、406-410.  瀬川恭平(1991):伊豆・小笠原海嶺域における表面水温変動、平成元年度黒潮の  開発利用調査研究成果報告書、255ー260.
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