三陸沖における海洋表層炭酸ガス分圧連続測定


[要約]
1997年1月と5月に黒潮域、混合域および親潮域で、通産省計量研で開発した機器により海洋表層炭酸ガス分圧を連続的に測定して、混合域から親潮域にかけての分圧が表面水温と良い相関があることを見出して、衛星画像からの分圧測定の可能性を示した。

中央水産研究所・海洋生産部・物質循環研究室

[連絡先] 045-788-7649[推進会議]中央ブロック水産業関係試験研究推進会議[専門]  海洋構造[対象]  [分類]  研究

[背景・ねらい]
 地球温暖化の進行に伴い、炭酸ガス動態と海洋との関係に大きな注目が集まってきている。とくに海洋表層の炭酸ガス分圧( pCO2 )は大気と海洋との間の炭酸ガスの流れを決定するものであるため、その測定に大きな努力が払われてきた。日本ではいち早く気象庁がシ ャワー方式という方法を取り入れて気象庁所属の調査船により系統的な調査を実施してきたが、この機器は大型でそのためもあって約1時 間に1回しかデータをとることが出来なかった。水産庁所属の多くの調査船は主として中型船であるため、この機器を搭載することが困難 であったが、工技院計量研で珊瑚礁海域の pCO2 測定のために全く異なる原理を用いて小型で測定するシステムを開発したので、共同研究 により中央水研所属調査船蒼鷹丸で測定することを試みた。これが成功すれば、水産庁の多くの調査船で pCO2 を測定することが可能とな る。

[成果の内容・特徴]

     得られた結果を図に示した。上段は1月、下段は5月の結果である。横軸は東経 144°上の緯度を示す。赤色(TEMP) は水温で単位は右 側、青色(flu) はクロロフィルを推定する蛍光、一番下の PLNK は動物プランクトンを示し、pCO2 (fC) は紺色で単位は左側 (ppm) 示さ れている。
  1. pCO2 が水温とよく追随していることからわかるように、応答がよく、4.5 分間で 90%応答し、精度よく連続測定できることが明らか となった。
  2. 1月には 38°N より北側の混合域・親潮域で水温の下降に伴い pCO2 が上昇していることがわかる。相関をとると、pCO2 = -87.9 * SST (表面水温)+ 397、R^2 = 0.84,標準偏差:8.8ppm
  3. 5月には 38°N より北側のやはり混合域・親潮域で水温の下降に伴い pCO2 も減少していることがわかる。pCO2 =22.7 * SST+36、R^2 = 0.93、標準偏差 : 10.9ppm
  4. 5月の親潮域で pCO2 が 160ppm まで減少したのは、植物プランクトン大増殖を反映しており、炭酸ガス動態に海洋生物が大きな役割 を果たしていることを示している。

[成果の活用面・留意点]
 pCO2 連続測定システムは小型のため水産庁所属の調査船に十分搭載可能であり、三陸沖のような複雑な海洋構造をもつ海域では、連続 測定により地球温暖化関連の重要なデータがとれる。また、1月と5月の混合域・親潮域の pCO2 を衛星画像水温から推定できる可能性を 示した。

[具体的データ]



[その他]研究課題名:表層炭酸物質の変動と海洋生物生産の影響に関する研究予算区分:地球環境研究総合推進費研究機関:平成8~10年度研究担当者:佐々木克之・田中勝久・小埜恒夫発表論文:なし
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