オーストラリア産ウナギの特性調査


[要約]
 オーストラリア産ウナギ(A. australis )について、飼育試験及び種の特性把握を行ったところ、成長は一部の成長優良群を除いてニホンウナギ(A. japonica)を大きく下回り、ニホンウナギとの識別は、外部形態やアイソザイムの分析により可能であった。

鹿児島県水産試験場指宿内水面分場

[連絡先] 鹿児島県水産試験場指宿内水面分場[推進会議]内水面(中央ブロック)水産業関係試験研究推進会議[専門]  内水面、増養殖技術[対象]  うなぎ[分類]  研究

[背景・ねらい]
 ウナギ養殖業は天然種苗(A. japonica)に依存しているが、近年、減少傾向を示していることから、他種(外国産)の飼育 試験等を行い、慢性的なニホンウナギのシラス不足の緩和と養殖経営の安定化を目的とする。

[成果の内容・特徴]

  1. ニホンウナギとの成長比較試験
    ニホンウナギは成長不良群1㎏、オーストラリア産ウナギは成長優良群1㎏を用い半流水式飼育で成長を比較した。
    期間を通じてオーストラリア産ウナギの成長がニホンウナギの成長を上回ったが、4ヶ月目以降、シュードダクチロギルスの寄生により、 成長が鈍化した(図1)。
  2. オーストラリア産ウナギの成長
    ニホンウナギとの成長比較試験に供した成長優良群以外の試験魚は、飼育の経過とともに分養を行って飼育したが、池入れ8ヶ月後では20 g以下の個体が全体の88%を占めたことから、一部の個体はニホンウナギと同等程度に成長するものの、大部分の個体はニホンウナギの成 長を大きく下回ることが判った。
  3. 外部形態
    導入したオーストラリア産には、A. australisA. reinhardtii の2種が混在しており、約9割が A. australis であった。これら2種について、ニホンウナギとの外部形態の差異を比 較したところ、全脊椎骨数の平均は A. japonica:116.1 に対し、A. australis:113.0 、A. reinhardtii:107.9 であった。背鰭前端から肛門間の脊椎骨数の平均は、A. japonica :9.1、 A. australis:1.5、A. reinhardtii:10.8であった。また、背鰭前端から肛門間の長さの全長に対する割合の平均 は、A. japonica:9.71%に対し、A. australis:1.63%、A.reinhardtii:10.40%であり、肥満度は、2種ともに ニホンウナギを上回った。
  4. 薬剤抵抗性
    ホルマリン、トリクロルホン、マラカイトグリーン、過マンガン酸カリウム、サイオドリンについて、ニホンウナギとオーストラリア産ウ ナギの稚ウナギの抵抗性を比較したところ、いずれの薬剤も抵抗性に顕著な差は認められなかった。
  5. アイソザイム分析による識別
    A. japonica、A. australis 、A. reinhardtii のシラス及び稚ウナギを試料として、デンプンゲル法により分析したところ、EST、 GPIの遺伝子座で3種間で異なることがわかった。

[成果の活用面・留意点]

  1. A. australis の成長は、一部の成長優良群を除いては A. japonica を大きく下回り、池入れしたシラスの全個体を出 荷サイズにまで養成するには 、A. japonicaの代替種苗として適当とは言い難い。なお今回の導入先であるクィーンズランド州では 採捕時期によりシラスウナギの種構成が異なることが知られいることから導入時期には留意する必要があるが、種の識別は、シラス期にお いても外部形態やアイソザイム分析を用いることにより可能である。

[具体的データ]


[その他]研究課題名:外国産しらすうなぎ養殖技術開発事業予算区分 :国庫補助事業研究期間 :事業全体 平成7~11年度(オーストラリア産については平成8~9年度)研究担当者:研究員 山本伸一  技術補佐員 児島史郎
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