北川ダムにおける陸封アユの母川回帰性について


[要約]
 北川ダムに流入する河川にアユの発眼卵(ALC標識)を放流し、ふ化仔魚を追跡調査したところ、放流河川と異なる河川で標識魚が再捕されたことにより、北川ダムのアユでは、サケ科魚類にみられる母川回帰性は少ないと考えれる。

大分県海洋水産研究センター内水面研究所

[連絡先] 0978-44-0329[推進会議]内水面(中央ブロック)水産業関係試験研究推進会議[専門]  内水面、 資源生態[対象]  アユ[分類]  研究

[背景・ねらい]
 アユは河川漁業の主要魚種であり、河川漁協を中心に種苗放流など積極的に資源増殖に取り組んでいる。その中で遡上量の増大を図る目的で、産卵場造成や産卵親魚保護などの資源増殖を行っている。しかし、河川でふ化した アユが海で成長し翌春に母川に回帰するかがわかっていない。母川回帰の有無によって、それぞれの河川で産卵保護を行うか環境条件の優 れた河川で大規模に行うかでその効果が違ってくる。アユの母川回帰調査は県内の主要河川である大分川と大野川で行ったことがあるが、 調査対象規模が大きく結果を得ることが出来なかった。そこで、アユが陸封していて流入河川が3つある北川ダムをモデル水面にしアユの 母川回帰の有無を調べた。

[成果の内容・特徴]

  1. 北川ダムは、中岳川、田代川及び市園川が流入している。
  2. 中岳川は他の河川に比べ谷間を流れるために水温が低く水量が豊富で安定している。
  3. 中岳川がダム湖面に流れ込む直前の淵と瀬の境に耳石にALC標識(アリザリンコンプレクソン 和光純薬工業)を付けた発眼卵を放 流した。
  4. ふ化稚魚の追跡調査を実施することによりダム湖面での標識魚の分布状態や標識率などの調査を実施した。
  5. 遡上時期を調べると共に中岳川と田代川で遡上アユを採捕し標識率を調査した。
  6. 遡上アユの標識率は中岳川が57.69%、田代川が43.48%であった。
  7. 標識率は母川である中岳川に比べ田代川は若干低いが、母川以外の河川でも遡上していることが確認できた。

[成果の活用面・留意点]

  1. 北川ダムでの調査研究でサケ・マス類で知られるような母川回帰性がアユでは少ないことが確認されたため、保護水面の設定や産卵 場造成などの産卵資源を確保する事業を行う場合、各河川でそれぞれ事業をするのではなく環境条件の優れた河川で大規模に行う方がアユ 資源の増殖に効果をもたらすことが出来ると考えられる。ただし、今回の調査では北川ダム内の限られた範囲内での結果であるため海面に 適応できるかは疑問が残る。

[具体的データ]




[その他]研究課題名:予算区分 :県単事業研究期間 :平成8年度(平成6~8年度)研究担当者:古川英一 発表論文等:-
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