オイカワ種苗放流技術開発試験
- [要約]
- オイカワの種苗生産において、人工産卵床を用いた効率的な採卵方法を開発した。天然魚からの親魚養成は容易である。また、人工種苗生産魚からの親魚養成も可能で満1才で成熟する。
福岡県水産海洋技術センター内水面研究所
[連絡先] 0946-52-3218[推進会議]内水面(中央ブロック)水産業関係試験研究推進会議[専門] 内水面、増養殖技術[対象] 他の淡水魚[分類] 研究
- [背景・ねらい]
- オイカワは福岡県でハヤと呼ばれており、特に筑後地方で需要が多い。加工品は「ハヤの飴煮」として珍重され、高価格で取り引き
されている。本県の各漁協ではアユと並ぶ重要種として、天然種苗の移植放流や産卵場造成によって増殖を図っている。
しかし、近年漁場環境の変化により、オイカワ資源は著しく減少し、従来の手法のみでは、資源増大が困難となっている。
そこで、人工種苗の生産及び放流技術開発によるオイカワ資源の増大を研究のねらいとした。
[成果の内容・特徴]
- 親魚は平成7年に採苗したもので、20トンコンクリート水槽を用いアユ用配合飼料で飼育した。
採卵試験期間中の親魚の飼育水温の推移と採卵数を図2に示した。産卵は産卵床を設置した7月1日夕方
から始まり9月19日まで断続的に行われた。期間中の採卵数は24,465個で、ふ化仔魚は11,730尾であった。産卵数が少なく卵質も安定してい
なかったが、これは親魚が1歳と若く体が小さい未熟な個体がいたためと思われた。
- 採卵には図1に示す人工産卵床(直径45cm×高さ20cm)を使用した。産卵床は常時設置し、卵はホースで親魚水槽外に吸い出し、小型円
形水槽に回収した。小型円形水槽には地下水を加え、水温の上昇を抑えた。回収計数した卵は、直ちにマラカイトグリーン処理し、ふ化瓶
に収容した。ふ化用水には地下水(21.6~22.6℃流水)を用いた。
卵を収容する小型円形水槽の水温とふ化率の関係を図3に示した。23℃以上ではふ化率が明らかに低く、
オイカワ卵は23℃以上でのふ化は適していないことがわかった。
- 飼育試験には、平成8年8月17日から8月28日に採卵したもの用いた。ふ化後ふ化瓶の中で2日間(無給餌)おいた仔魚を1トンFRP円形水
槽に収容し、地下水を用いて飼育した。給餌は収容後すぐに行い、天然餌料(ミジンコ)及び人工飼料を与えた。初期の人工飼料は人工プ
ランクトンで、その後徐々にアユ用の初期飼料に切り替えた。人工飼料に餌付くとへい死はほとんどなく飼育は容易であった。ふ化後100日
齢の稚魚は平均体長が22mm、ふ化仔魚からの生残率は約31%であった。
[成果の活用面・留意点]
- 民間の養殖施設で生産することで、種苗放流量を増やすことができる。将来は、養殖による加工原料の安定供給も図れる。
[具体的データ]
[その他]研究課題名:オイカワ種苗生産技術開発試験予算区分 :内水面資源増養殖事業研究期間 :平成8年度(平成6年~8年度)研究担当者:浜崎稔洋、筑紫康博発表論文等:オイカワの種苗生産における採卵方法の検討、福岡水技研報、第5号、21-23,1996
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