アユによる魚道遡上条件の検討


[要約]
 アユを用いてデニール魚道の設置条件を検討し、魚道の堰堤下流側突出、魚道以外の落水刺激および魚道流量の減少は遡上率を低下させることを確認した。また、魚道内流速と遡上率から、最適流速の存在が示唆された。

広島県水産試験場淡水魚支場

[連絡先] 08247-2-1623[推進会議]内水面(中央ブロック)水産業関係試験研究推進会議[専門]  内水面、漁場環境[対象]  あゆ[分類]  研究

[背景・ねらい]
 魚道で最も問題とされているのは,魚が利用しないことである。この原因は,設置位置や設置環境が悪いために魚道を認識しないこ と,もしくは,魚道を遡上する動因の不足と考えられる。そこで,堰堤と魚道の設置位置および堰堤の流水環境から,アユが遡上に至る刺 激の大きさを、流水刺激(流量・流速)量を変化させて検討した。

[成果の内容・特徴]

     試験場の試験池を仕切って模擬堰堤とし,デニール式魚道を設置した。模擬堰堤の下流側に100尾のアユを収容して,以下のことについて 行動と遡上率を検討した。
  1. 堰堤下流側へ1m突出した魚道と突出のない魚道の1時間後の遡上率を比較したところ,突出のない方が遡上率は高かった( 図1;突出1m = 0~17%,突出なし = 20~39%)。
  2. 堰堤から魚道流水,堰堤越流,砂落とし落水を作成し,それぞれを組み合わせて,アユが最も認識しやすいケースを1時間後の遡上率お よび目視観察から検討したところ,堰堤から魚道のみの流水がある場合が,平均遡上率 34%で最も高くなり,アユは魚道直下に集群してい た。一方,魚道以外から流水や落水が加わると,アユの分散や一定方向への旋回,他の刺激に対する集群が観察され,遡上率も低く平均15% であった。
  3. 魚道の流量を 7リットル/s と 14リットル/s に設定し,1時間後の遡上率を比較したところ,それぞれ平均 35%,48%となり,流量が 多い方がアユの遡上は活発になった。
  4. S.L.109mmのアユは,魚道流速 0.8~1.4m/sの範囲に対して,4時間後の遡上率で上に凸の傾向が表れ,2次曲線を回帰させると,流速1 .12m/sで極大値 81%を持った(図2)。このことから,アユの遡上に適した魚道流速値は体長のほぼ10倍 であることが明らかとなった。

[成果の活用面・留意点]

  1.  本試験から,魚道の突出や堰堤からの落水刺激,魚道からの流量や流速が,アユの遡上率に影響を与えることが確認された。

[具体的データ]



[その他]研究課題名:「魚の棲みよい川づくり」技術開発研究予算区分 :単県研究期間 :平成6~8年度研究担当者:戸井真一郎発表論文等:アユによる魚道遡上条件の検討,広島県水産試験場研究報告,20号,投稿
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