琵琶湖および河川の水生生物の生息状況調査
- [要約]
- 平成6年4月から平成8年3月にかけて、琵琶湖、河川、内湖等、県下に生息しているといわれている魚類70種、甲殻類(エビ類・カニ類のみ)7種について、現時点での生息状況を調査した。
滋賀県水産試験場
[連絡先] 0749-28-1611[推進会議]内水面(中央ブロック)水産業関係試験研究推進会議[専門] 内水面[対象] 淡水魚、甲殻類[分類] 行政
- [背景・ねらい]
- 社会情勢の急激な変化にともない、琵琶湖の環境は様変わりし、また外来生物の侵入等により、生態系も大きく変化してきたことから、あらためて琵琶湖を中心とした生態系の現況を把握することとした。
[成果の内容・特徴]
- 今回の調査で生息の確認できなかったのは、アオウオ・カワヒガイ・ニッポンバラタナゴ・アユモドキの4種類であった。
- 水域別の採集状況は次のとおりであった。
・琵琶湖沿岸では魚類41種および甲殻類4種が採集された。沿岸帯で採集された魚類等のうち、オイカワ、タナゴ類、フナ類稚魚、テナガ
エビなど多くの水生生物はヨシ群落あるいはその前面の水域を重要な生息場として周年利用していた。
・琵琶湖沖合では魚類21種および甲殻類2種が採集された。なお、琵琶湖ではほとんど漁獲されていなかったワカサギが平成6年の夏期(7月
中旬)にエリで大量に漁獲され、琵琶湖沖合の調査でも長浜市沖合水深30mの地点で1曳網あたり52尾が採集されるなど、急激な増加のきざ
しが見られた。
・河川では魚類52種、甲殻類5種が採集された。瀬や淵が連続して存在するなど河川環境が変化に富み、自然護岸や河川中に水草等の植生
のある調査区域では採集種類数が多かった。
・内湖では魚類29種および甲殻類3種が採集された。調査内湖の中では西の湖のように面積が広く湖岸の形状が複雑で、小河川や水路が多く
、自然護岸にはヨシ群落が形成されているなど、環境が多様な内湖ほど種類数が豊富であり、一方面積が狭く湖岸の形態や植生が単調であ
る柳平湖ではオオクチバスとブルーギルのほかコイしか採集されなかった。
- オオクチバスやブルーギルは琵琶湖沿岸や内湖を中心に、多数採集された。
- 平成元年に初めて姉川河口付近で発見されたヌマチチブは調査した沿岸のほとんどで採集され、内湖や河川の中流へも分布が広がって
いた。在来の魚類に対する影響の程度や今後の動向について留意するとともに、新たな水生生物の侵入防止対策の強化が望まれる。
- 本調査期間中に漁業者等より採捕通報があり当場で確認した新たな魚類はガーパイク2尾、クラウンナイフフィシュ1尾、クルメサヨリ
9尾、コクチバス1尾で、琵琶湖沿岸等で漁業操業時に捕獲された。
[成果の活用面・留意点]
- 漁業活動の基盤となる琵琶湖等県下水域の生態系の現況および環境と生物あるいは生物相互間の関係等を明確にすることにより、今後
の水産振興対策や琵琶湖保全対策の基礎資料として活用する。
[具体的データ]
[その他]研究課題名:琵琶湖および河川の水生生物の生息状況調査予算区分 :平成6年度~7年度研究期間 :県単研究担当者:水産試験場全員
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