異質三倍体魚ニジイワのIHNに対する抗病性
- [要約]
- ニジマスを雌親、イワナを雄親にして染色体操作で作出した異質三倍体魚ニジイワのIHNに対する抗病性を調べた結果、ニジイワにはIHNに対する強い抗病性があることが明らかとなった。
愛知県水産試験場内水面漁業研究所三河一宮指導所
[連絡先] 0533-93-1433[推進会議]内水面(中央ブロック)水産業関係試験研究推進会議[専門] 内水面、増養殖技術[対象] 他のさけます[分類] 研究
- [背景・ねらい]
- 近年、マス類の養殖業は魚病の頻発、飼料の価格上昇、販売価格の低迷など悪条件が重なり、経営が次第に悪化しつつある。このよ
うな状況下で、経営改善を目的に付加価値を高めるための努力が、試験研究を含めて様々になされている。
当所ではその一環として、異質三倍体魚ニジイワの作出を手がけているが、新たな養殖品種として普及させるためには、従来種と比較し
て有利な特性を持つ必要がある。ここでは、近年ニジマス類養殖でもっとも被害の大きいウィルス病であるIHNに対するニジイワの抗病
性試験の結果について述べる。
[成果の内容・特徴]
- ニジイワのIHNに対する抗病性を調べるため、3回の感染試験を実施した。
- 試験には、愛知県内養殖場で発生した魚病による大量へい死の病魚から分離したウィルス(IHNウィルス確認済み)を用いた。なお
、試験1、2のウィルスは同一の株で小型魚の大量へい死を引き起こしており、試験3のウィルスは1kgサイズのニジマスで半数近いへ
い死を引き起こしている。
- 試験1では培養細胞RTG-2で測定した感染の力価TCID50が103.8/mlの飼育水を調整し、その飼育水中に供試魚を1時間
浸積して感染させた。試験2、3では供試魚の腹腔に注射で直接ウィルス液を注入して感染させた。それぞれウィルスを除いてまったく同
様の操作を加えた対照区を設けて比較した。
- その結果、いずれの試験においてもニジマスは高い死亡率を示したのに対して、ニジイワはほとんど死亡しないか、もしくは低い死亡
率を示した。これらの死亡魚についてはウィルス検出及び症状で、ほとんどがIHNと診断できた。
- これらの結果から、ニジイワは少なくとも1.5~12.5gのサイズではIHNに対して高い抗病性を持つことが明らかとなった。
[成果の活用面・留意点]
- 本試験ではニジイワのIHNに対する抗病性を述べたが、他の病気に対する抗病性については明らかになっていない。河川水を用いた
マス類養殖では、水温の変動に伴い様々な病気の発生が見られるので、それらに対する抗病性も明らかにしていく必要がある。
- その上で、ニジイワの特性と養魚場の特徴をともに活かした事業化が今後の課題と思われる。
[具体的データ]
[その他]研究課題名:冷水魚増養殖技術試験予算区分 :水産試験場費-試験費研究期間 :平成6~8年度研究担当者:落合真哉、中村総之、石田基雄発表論文等:なし
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