養殖ウナギ代替種苗としてのオーストラリア産ウナギ(Anguilla reinhardti)の飼育


[要約]
 A.reinhardtiをシラス期から試験飼育したところ、成長が悪く、295日間の養成後に体重100g以上に成長した個体は2.5%に過ぎなかった。ニホンウナギと比較して、種苗価格は安価であるが、尾数歩留り、飼料効率等の飼育成績はかなり劣った。

愛知県水産試験場内水面漁業研究所

[連絡先] 0563-72-7643[推進会議]内水面(中央ブロック)水産業関係試験研究推進会議[専門]  内水面、増養殖技術[対象]  うなぎ[分類]  研究

[背景・ねらい]
 ウナギの養殖用種苗は、その全てを天然のシラスウナギに依存しており、近年の漁獲量減少に伴う種苗価格の著しい高騰が養殖経営 を強く圧迫している。そこで、安定確保が可能で安価な外来種のシラスウナギを加温ハウス方式で飼育試験し、ニホンウナギ(A.japonica) の代替種苗としての評価を行い種苗導入を図ることを目的に、オーストラリア東部地域に広く分布するA.reinhardtiを供試した。

[成果の内容・特徴]

  1. クインズランド州バーネット川で採捕されたシラスウナギ3,800尾を供試した。
  2. 人工餌付け飼料を用いた初期養成の飼育成績は、ニホンウナギよりも多少劣った。
  3. クロコ養成期から原因不明の摂餌不良がおこり、飼料効率、日間増重率ともにニホンウナギのそれらを大きく下回り、明らかな成長差 が見られた(図1)
  4. 成魚養成期にに入っても摂餌不良がおこり、補正飼料効率は53%、歩留りは52%であった。
  5. 飼料期間の経過に従い、成長の個体差は大きくなり、給餌しても大きな個体のみが摂餌をし、小さな個体は餌に寄り付かない場合が多 かった。
  6. 295日間の養成後に取揚げしたところ、1,153尾(0.4~366.7g/尾)中100g以上に成長したものは2.5%に過ぎず、83%は3g以下、92%は 10g以下であった(図2)
  7. 急性毒性試験結果(24hLC50)は、ホルマリン220、メトリホナート80ppmであった。
  8. 体成分分析を行ったところ、ニホンウナギと比較して、一般成分では粗脂肪がやや多く、遊離アミノ酸ではグリシンが多い傾向にあり 、脂肪酸組成にはほとんど差がなかった。

[成果の活用面・留意点]

  1. この種は体表に明瞭な斑紋があり、ニホンウナギと比較して、その体形は太く短く、腹腔内には消化管の周囲に大量の脂肪塊があるた め、加工した場合の歩留りは低かった。呈味試験の結果は良好であったが、ニホンウナギと比較して成長の個体差が著しいために、ごく一 部の成長優良群を除いては養成に長期間を要すと推察され、尾数歩留りや飼料効率等も劣るため、代替種苗として加温ハウス養殖方式に導 入するのは困難だと考えたれた。

[具体的データ]



[その他]研究課題名:予算区分 :研究期間 :研究担当者:発表論文等:
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