ミヤコタナゴの生態試験地における繁殖試験


[要約]
 試験場の生態試験池にミヤコタナゴと産卵母貝を放流し、繁殖試験を実施した。1年目から繁殖が行われ、少数の稚魚が得られた。2年目はカワシンジュガイを産卵母貝に使用し 500尾以上の稚魚が得られた。

神奈川県水産総合研究所・内水面試験場

[連絡先] 0427-63-2007[推進会議]内水面(中央ブロック)水産業関係試験研究推進会議[専門]  内水面、増養殖[対象]  その他の淡水魚[分類]  研究・行政

[背景・ねらい]
  ミヤコタナゴは国指定の天然記念物であり、絶滅の危機に瀕している。神奈川県の自然水域 からは既にその姿を消し、当場をは じめ少数の機関で系統保存のための継代飼育が行われてい る。しかし、これはあくまで緊急避難的な措置であり、自然水域での個体群復 元が緊急の課題 となっている。
その第一歩として、場内の生態試験池にミヤコタナゴと産卵母貝を放流し、自然状態で繁殖 試験を実施し、生残、成長、繁殖状況食性 等について調査を行った。

[成果の内容・特徴]

  1. 1995年はミヤコタナゴ1歳魚雌雄20尾ずつ、産卵母貝としてカラスガイとマツカサガイを20個体ずつ放流し、30尾の浮上稚魚を確認し た。翌年春までの生残数は、親魚が13尾、繁殖魚が22尾であった(第1図)
  2. 1996年はミヤコタナゴ1歳魚雌雄20尾ずつと昨年の生残個体、産卵母貝としてドブガイとマツカサガイを20個体ずつ、カワシンジュガイを 10個体それぞれ放流した。特にカワシンジュガイの周囲で活発な 繁殖行動が観察され、夏期には無数の稚魚が浮上した。冬期の取り上げ で、1~2歳魚40尾、繁殖魚522尾を採集した(第2図)。本種は自然状況下において産卵母貝や水質環 境等の条 件が整えば、比較的容易に繁殖することが証明された。
  3. ミヤコタナゴ採集方法は、ビンドウ、四手網、曳き網を使用し、効率的な採集方法を検討しな がら、取り上げを行った。ビンドウ による採集では、採集数は初日に多く、採集時間は夕方に多く採集される傾向があった。大型の個体はほとんどがビンドウで採集された。
  4. 繁殖に使用した産卵母貝は行方不明個体が多く、生残や成長等の詳細は不明である。

[成果の活用面・留意点]

  1.  本種の放流候補地の選定や試験放流方法の検討、放流試験地における再捕方法の検討等に成 果を活用する。
    天然記念物であるため、移動等の時には文化庁の許可手続きが必要である。

[具体的データ]



[その他]研究課題名:生態系復元研究予算区分 :研究期間 :平成8~12年度研究担当者:勝呂尚之発表論文等:平成9年度日本水産学会春期大会講演要旨集
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