護岸水域におけるフナ類の増殖
- [要約]
- 下流域河川のコンクリート護岸化が進み、フナ類の産卵場所が喪失しているところから、このような水域に人工魚巣を敷設して自然産卵を誘発し、産卵条件と資源添加効果を把握してフナ類の新たな増殖技術を開発した。
埼玉県水産試験場
[連絡先] 0480ー61ー0458[推進会議]内水面(中央ブロック)水産業関係試験研究推進会議[専門] 内水面、増養殖技術[対象] 他の淡水魚[分類] 普及
- [背景・ねらい]
- 県内平野部の河川下流域や池沼のほとんどがコンクリートにより護岸化され、コイ、フナ類の産卵場所は全く消失して、再生産の可
能性が皆無である状況の中で、漁業協同組合は、毎年、これらの魚種を大量に放流している。
そこで、護岸化された水域に人工産卵場を敷設して自然産卵を誘発させ、水域での再生産を助長し、放流量の軽減化を図る一方、流域住
民への水産環境保全についての関心を喚起しようとするものである。
[成果の内容・特徴]
- 人工魚巣は、透明な軟質ポリエチレンシート(0.05mm厚)を長さ50cm、幅9cmの帯状にし、その両側に35~45度の角度で幅1cm、長さ
4cmの切り込みを入れたもの50本を1束として、5~10秒間熱湯処理したものを使用した。
- 人工産卵巣は、葛西用水に200束(長さ50m)、大吉調整池に140束(幅2m、長さ20m)敷設して自然産卵を誘発した。
- 産卵は、葛西用水で62日間で9回行われ、総産卵数は1,434万粒、大吉調整池では87日間で8回行われ、総産卵数は516万粒であった
(表1)。
- ふ化率は産卵日により異なったが、55~90%であった(表2)。
- 大吉調整池でALC標識魚を放流し、現存量は44,600尾と推定された。
[成果の活用面・留意点]
- 新たに作成した人工魚巣は泥水中に浸漬し、表面をざらつかせておく必要がある
- 自然水域ではフナの他、コイ、ナマズ、モツゴ等の産卵がみられた。
- 産卵後も人工魚巣を設置しておくと稚魚の成育の場所となる。
[具体的データ]
![](nrifs96308-1.jpg)
![](nrifs96308-2.jpg)
[その他]研究課題名:護岸水域におけるフナの自然産卵誘発試験予算区分 :県単研究期間 :平成6~8年研究担当者:金澤 光発表論文等:なし
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