人工産卵場の造成によるイワナの保護増殖


[要約]
 繁殖保護により、イワナの増殖の可能性を検討するため、人工的に造成した産卵場への産卵と産着卵の発生および稚魚のふ化状況を調査した結果、人工産卵場の造成によりイワナの保護増殖が可能であることが判明した。

栃木県水産試験場

[連絡先] 028-662-3535[推進会議]内水面(中央ブロック)水産業関係試験研究推進会議[専門]  増養殖技術、内水面[対象]  他の陸封性さけます[分類]  普及

[背景・ねらい]
 イワナは渓流に生息し、釣りの対象として大変人気のある魚であるが、最近では全国的に生息数が減少している。原因として釣り人 の増加による乱獲以外に砂防堰提や林道の建設によって河川環境が悪化し、産卵場所が少なくなったことも大きな原因のひとつである。ま た、イワナは地域によって形態が異なり、遺伝的にも相違があることが考えられるが、養殖魚の放流によって遺伝的混乱が進行している可 能性がある。
 そこで、自然繁殖によって在来イワナが増殖出来るようにするため、産卵場所の造成技術の開発を試みた。

[成果の内容・特徴]
 鬼怒川上流部の小支流に人工産卵場を造成した(図1)。
 当産卵場は過去4年間に1度も産卵に利用されなかった場所に造成し、水深25cm以下、流速40cm/s以下、面積0.4~1.6m2、 底質は砂礫となるように造成した(図3)
 造成後、支流の在来魚と鬼怒川本流からの遡上魚に自然産卵させた。産卵後の12月下旬に産卵場の砂礫を掘り起こし、産卵の有無と産着 卵の発眼率を確認した。翌年の3月下旬に再度産卵場を掘り起こし、稚魚のふ化状況を確認した。
 12月下旬に行った産卵状況調査の結果、8か所の人工産卵場のうち3か所で産着卵が確認された。確認された4つの卵塊の発眼率はそれ ぞれ22、82、92、100%で、1つの卵塊を除いて発生は良好であった。
 翌年の3月に行ったふ化の状況調査の結果、産卵場の卵室の中には死卵の破片が若干数確認されたのみで、発眼卵はふ化し、ふ化した稚 魚は産卵場から浮上したと考えられた。

[成果の活用面・留意点] 本試験から、イワナの増殖を図る際に人工産卵場の造成が有効な手段のひとつとなりうることが示唆された。

[具体的データ]




[その他]研究課題名:イワナ、ヤマメ人工産卵場造成試験予算区分 :県単研究期間 :平成8年度研究担当者:中村発表論文等:未発表
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