コイ全雌生産実用化試験


[要約]
 コイの全雌種苗生産の実用化にあたり、性転換雄(XX型雄)を効率的に作出するための雄性ホルモン処理条件について検討を行った。その結果、0.5~3.5月齢の期間中0.1μg/lの17α-メチルテストステロン浸漬処理を行うことが有効であることが判明した。

茨城県内水面水産試験場

[連絡先] 0299-55-0324[推進会議]内水面(中央ブロック)水産業関係試験研究推進会議[専門]  内水面、水産育種[対象]  こい[分類]  研究

[背景・ねらい]
 コイの雌は、卵持ちである、肉色が鮮やかである、成長が速く飼料効率も良い、等の点で雄より優れていることから、業界からの全 雌生産技術実用化への要望は強い。

[成果の内容・特徴]

  1. 実用的な全雌コイ生産技術を開発するに際しては、本県での養殖形態が湖内網生簀 養殖であることから、種苗の自然界への逃出を考 慮し、本試験では水産庁長官通達「三倍体魚等の水産生物の利用要領」において規制の対象となる雌性発生(倍数化)の手法を用いないも のとした。
  2. 全雌種苗生産の実用化までのフロ-は次のとおり。a)通常発生魚への雄性ホルモン(MT)処理 → b)後代検定による初代性転換雄の判 定 → c)初代性転換雄と通常雌の交配による全雌稚魚からの大量の性転換雄の作出 → d)全雌種苗生産の実用化
  3. 今年度は初代性転換雄由来の全雌群を用い、効率的な雄化誘導のためのホルモン処理方法について検討を行った。
  4. ホルモン処理は17α-メチルテストステロン浸漬法とし、6種類の処理期間(0.5~1.5月齢の30日間、0.5~2.5月齢の60日間、0.5~3.5月齢の90日 間、1.0~3.5月齢の75日間、2.0~3.5月齢の45日間、3.0~4.0月齢の30日間)と3種類のホルモン濃度(0.1μg/l,1.0μg/l,10.0μg/l) の各組合せによる18試験区(各区:100尾)を設定した。なお、飼育水温は25℃、MT処理は8時間/日、5日/週とした。
  5. 各試験区のMT処理後の生残率は86~100%であった。
  6. 各試験区について50~67個体を検査した結果、雄の出現率(雄化率)は無処理区(対照)が0%であったのに対し、2.0~90.2%であっ た(表1)
  7. 雄化率の最も高かったのは0.5~3.5月齢・0.1μg/l処理区で、同区はGSI、精子の運動性の検討結果も良好であることから、性転換雄 作出条件として適当であると考えられた(表2)

[成果の活用面・留意点]

  1.  現在実用生産に向けて約100個体の性転換雄の親魚候補を養成中であるが、使用可能な親魚(2以上)までの養成に今 後さらに1年以上を要する。
  2. 性転換雄親魚については商品成魚に混入して食用に供されることを避けるため、その養成・管理は当内水試が行う必要がある。

[具体的データ]



[その他]研究課題名:コイ全雌全雌生産実用化試験予算区分 :県単(茨城県農業技術課予算)研究期間 :平成9年度(平成7~13年度)研究担当者:渡辺  直樹  主任研究論文等:17α-メチルテストステロン浸漬法による Cyprinus carpio               の性転換雄作出について、茨城県内水試調研報、No.33、1997
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