本州北部太平洋岸のサクラマス幼魚の成長と相分化


[要約]
 ピットタグ識別法を用い、サクラマス幼魚の成長と相分化を個体別に明らかにした。1+春放流種苗のスモルト化率の向上には、成長コントロールによる雌のスモルト化率の向上が有効である。

宮城県内水面水産試験場

[連絡先] 022-342-2051[推進会議]内水面(中央ブロック)水産業関係試験研究推進会議[専門]  内水面,増養殖技術[対象]  さくらます[分類]  研究

[背景・ねらい]
 サクラマス資源造成にあたり、1+春にスモルト化した幼魚を放流することが効果的とされている。本州北部太平洋岸におけるサクラ マスは、早期に成熟する残留型パー雄魚の出現率が高いため、成熟雄の出現の抑制が重要とされてきたが、スモルト化率は最大でも36%で あった。迫川系0+稚魚をピットタグ識別し、個体別に成長と相分化を明らかにし、スモルト化率を高める手法について検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. 1+春での雌雄別のスモルト化率は、雄が18.8%、雌が65.4%と、雌雄で異なった(表1)
  2. 雌では、0+8月上旬までに平均尾叉長10cmと成長が優れた個体の多くが、1+春の3月上旬にスモルトとなり、残りの一部が残留型パー となった。また、0+8月上旬において成長の劣った個体の多くは1+春の時点で小型パーであった(図1)。
  3. 雄では、0+8月上旬までに平均尾叉長が11cm以上と成長が優れた個体の多くが1+春に残留型パーとなった。また、0+8月上旬までに尾 叉長が11cmに達しなかった個体のうち、その後優れた成長を示した一部の個体が1+春にスモルトとなり、0+8月上旬以降成長が劣った個体 の多くは小型パーであった(図1)
  4. サクラマス迫川系群1+春スモルト幼魚の育成に当たっては、雌のスモルト化率を向上させることが効率的で、このためには0+8月上旬 に尾叉長約10cm、1+3月上旬に同15cmになるように給餌コントロールすることが重要と考えられた(図1)

[成果の活用面・留意点]

  1. 従来実施してきた給餌抑制による1+春放流魚のスモルト化率は4~36%であった。しかし、 ピットタグによる成長・相分化様式を明らか にした上で作成した成長コントロールにより、 平成8年春放流時のスモルト化率が49.0%と向上した(表2)。

[具体的データ]




[その他]研究課題名:さくらます造成技術開発調査事業予算区分 :国庫補助研究期間 :平成6年度~平成7年度研究担当者:生産開発科発表論文等:平成7年度さくらます造成技術開発調査事業報告書(宮城県)
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