DNA多型性を利用した養殖アマノリの品種判別


[要約]
 アマノリの核DNA中に反復して散在する塩基配列を明らかにし、また、養殖アマノリの品種判別がこれらのDNAや合成DNAを用いた制限酵素切断片長多型解析やランダム増幅多型DNA解析によって可能であることを示した。
西海区水産研究所・資源増殖部・浅海育種研究室
[連絡先]  0958-22-8158
[推進会議] 西海ブロック水産業関係試験研究推進会議
[専門]     水産育種
[対象]     のり
[分類]     研究

[背景・ねらい]
 養殖アマノリには多くの品種が報告されているが、これらの品種は色や形態等では全く見分けがつかないため、品種の系統的な分類や育種研究への利 用がほとんど行われていない。本研究は、多様な品種の育種等への有効利用のため、核DNA中の高頻度反復配列や合成DNAを用いた制限酵素切断片長多 型(RFLP)やランダム増幅多型DNA(RAPD)解析によってDNA多型性を調べ、品種判別のための基礎技術を開発することを目的としている。
[成果の内容・特徴]
  1. (CTC)6、(GT)8等の合成DNAと制限酵素を用いたRFLP解析によって6品種間でお互いに異なったフィンガープリ ントを得た(図1)。フィンガープリントの品種特性を利用して、養殖アマノリの品種判別の可能性が示唆された。
  2. RAPD解析によって単一品種、または、特定の複数品種共通に多型性を示すDNAバンド(RAPDマーカー)が検出された( 図2)。これらのDNAバンドは品種判別の分子マーカーになり得るものと推察された。
  3. 核DNA中に、高GC含量の塩基配列から成る反復配列の存在を明らかにした。これらの配列の一部には(GGT)n由来と思われる特異な配列が見い 出され(図3)、アマノリの品種判別へ利用された。
[成果の活用面・留意点]
 本研究の成果は、アマノリ養殖場での栽培品種の識別や高成長性、耐病性等の特性に結びつけた養殖品種の同定などに活用される。また、交雑、細胞 融合、変異株作出等の育種研究に遺伝子レベルでの情報を与え、その効率的推進に役立つものと思われる。

[その他]
研究課題名:DNA多型性の利用によるアマノリ類の種・系統判別技術の開発
予算区分 :バイテク(バイテク育種)
研究期間 :平成8年(平成5~7年)
研究担当者:水上 譲、(岡内正典)
発表論文 :1)アマノリ類のバイオテクノロジー、応用と展望、月刊海洋、27巻、1995
      2)DNA fingerprinting of cultivated laver (Porphyra yezoensis and 
       P. tenera) with oligonuclotide probes, and its application
        to cultivar discrimination., Fisheries Sci.,62巻,2号, 1996
      3)Discrimination od laver cultivars with RAPD markers., Fisheries
              Sci.,62巻,4号,1996
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