扉付流れ藻捕捉装置


[要約]
 海底を漂流する流れ藻を高率で捕捉し、どのような激浪になっても流失させない装置として本装置が開発され、実験によってその適正な構造と設計法が決定されるとともに磯焼け場で行った現地試験によって高い流れ藻捕捉効果が確認され、ウニ、アワビの増養殖および流れ藻通過量調査に利用できることが示された。
水産工学研究所・水産土木研究所・漁場水理研究室
[連絡先]  0479-44-5937
[推進会議]  水産工学研究推進全国会議
[専門]     水産土木
[対象]     アワビ、ウニ
[分類]     普及

[背景・ねらい]
 大型海藻はアワビ、ウニの重要な餌料であるが、それらは浪当たりの強い浅い岩礁に成育するため、海藻生産量のうちアワビ、ウニ に利用されることなく、流れ藻として外洋へ流出している割合が高く、磯根漁場造成では流れ藻を滞留させるための施設の造成が強く望ま れてきた。しかし流れ藻は水中では極めて軽いため、海底の凹凸、砕波によって発生する渦(乱れ)によって頻繁に海底から巻き上げられ たり、拡散したりする。このため、コンクリートブロック、石材を並べたもの、柵などの障害物では流れ藻を長期間滞留させることができ ないことが明らかになっていた。
 そこで、水工研では流れてきた流れ藻を高率で捕捉し、かつ捕捉した流れ藻は激浪時にも流出させない流れ藻捕捉装置の開発を検討し、 波によって装置の内側には開くが、外側には開かないようにした扉を箱形の格子構造物の1側面につけた装置( 図1)を考案し、効果および設計に関する研究を行った。また実用的な装置を試作し、その効果を現地で確かめた。

[成果の内容・特徴]
 実験によって以下のことが明らかになった。
  1. 本装置は扉が閉じる時にできる負圧の効果によって、図2に示すように扉の前方から接近してくる 流れ藻だけでなく、扉の両端から少し離れた所を通過する流れ藻も捕捉することができる。
  2. 適正に設計すれば、扉の前方から接近する流れ藻を90%以上の確率で捕捉でき、また流れ藻の捕捉可能範囲は扉の両端から扉の幅離 れた所に及ぶ。
  3. 流れ藻を満杯に近い状態まで捕捉できる(図3)。
  4. 捕捉された流れ藻はウニなどに食べられたり細片化しない限り、装置から流出しない。
  5. 装置に捕捉された流れ藻は極めて効果的にウニ等の餌料として利用される(図4)。


[その他]
研究課題名:藻留め工の開発研究
予算区分 :沿整・経常
研究期間 :平成4~7年度
研究担当者:川俣 茂、山本正昭、武内智行
発表論文 :1)扉付流れ藻捕捉装置の開発、平成6年度日本水産工学会学術講演会講演
       論文集、1994
      2)扉付流れ藻捕捉装置の現場実験、平成7年度日本水産工学会学術講演会
       講演論文集、1995
      3)Development of a Drift-algal trap for nearshore rocky aquaculture.
              Proc. of ECOSET'95,1995
            4)扉付流れ藻捕捉装置の現場実験(第2報)、平成8年度日本水産工学会
       学術講演会講演論文集、1996
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