小型漁船操業時における有害ガス排出量および燃料消費量のシミュレーション


[要約]
 試験機関より得られた計測結果をもとに、漁船が操業時に排出する有害ガス量および燃料消費量を推定するシミュレーション手法を開発した。一例として瀬戸内海の小型機船底びき網漁船に搭載されている無過給機関を過給機付き機関とした場合を想定してシミュレーションを行い、排気ガス中の有害成分の抑制および燃費改善の可能性を検討した。
水産工学研究所・漁船工学部・漁船機研、制御研
[連絡先]  0479-44-5945
[推進会議] 水産工学研究推進全国会議
[専門]     漁船
[対象]     
[分類]     調査

[背景・ねらい]
 近年の大気汚染深刻化にともなって、船舶についても各種有害排気ガス成分の排出規制がなされようとしている。当然、漁船に搭載 される機関についても大気汚染防止を配慮すべきであり、また運用面から有害ガス排出を抑制する方法も検討する必要がある。これら諸問 題に関する指針を得ることを目的に、小型漁船が操業中に排出する各種有害ガス排出量および燃料消費量を推定するシミュレーション手法 を開発した・このシミュレーションは、試験機関を用いた様々な条件下(負荷・回転数)の各種有害ガス排出量および燃料消費量の計測結 果に基づき組み立てられ、様々な種類の漁船の操業状況を想定した推定計算が可能である(図.1)。
 次に、この手法を瀬戸内海の小型機船に適応し、搭載機関のあり方について考察した。一般に漁船機関は、過給機を装備して高出力化を 図っているが、瀬戸内海の小型底びき網漁船をはじめとするいくつかの海域の漁船の搭載機関は、資源保護を目的とした漁獲量制限との関 連で無過給機関に制限されている。これを同一出力の過給機付き機関とした場合を想定してシミュレーションを行い有害ガス排出の低減お よび燃費改善の可能性を検討した。

[成果の内容・特徴]
  1. 試験機関より得られた結果をもとに、小型漁船が様々な操業条件において排出する有害ガス成分量および燃料消費量を推定するシミュ レーション方法を開発した。
  2. シミュレーション手法を瀬戸内海の小型機船底びき網漁船に適応し、搭載機関の変更による有害ガス排出の低減および燃費改善の可能 性について検討した。
  3. その結果、瀬戸内海の小型底びき網漁船では搭載機関を過給機付き機関に変更することで、窒素酸化物の排出量が約半分まで削減でき る可能性のあることがわかった。他の有毒ガス成分および燃費についてはほとんど変化がみられなかった(図 .2)。

[成果の活用面・留意点]
 このシミュレーション手法による推定値は試験機関の測定結果をもとに計算を行った概算値であるが、有害排気ガス抑制などを検討 する場合の比較参考値になり得ると考える。今後漁船に搭載される機関を制限する各種規制の適応にあたっては、大気汚染問題等に配慮し 、本研究の結果が活用されることが望まれる。

[その他]
研究課題名:漁船機関の排気ガス特性に及ぼす燃料性状の影響
予算区分 :経常
研究期間 :継6~8
研究担当者:漁船工学・漁船機研 長谷川勝男;高橋秀行
      漁船工学・制御研  小田健一
発表論文 :1)小型漁船運航時におけるNOX排出量に関するシミュレーション,
       平成7年度日本水産工学会学術講演会論文集、1995
      2)環境面からみた漁船機関の出力制限のあり方に関する一考察、
       平成8年度日本水産工学会学術講演会論文集、1996
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