ウミウチワ属褐藻から化学的防御物質を発見


[要約]
 西日本沿岸で海藻群落遷移の途中相をなす褐藻ウミウチワとウスバウミウチワから植食動物に対する化学的防御物質を4種発見した。その結果、磯焼け海域における海中林造成に両種を用いた技術開発の展望が拓けた。
東北区水産研究所・資源増殖部・藻類増殖研究室
[連絡先]  022-365-9932
[推進会議] 東北ブロック水産関係試験研究推進会議
[専門]     水産増殖
[対象]     海藻
[分類]     研究

[背景・ねらい]
 「磯焼け」化したサンゴモ平原を海中林に回復されるためには、海中林へ遷移する機構を解明し、生態系防御による造林技術開発が 必要である。このため、遷移の途中相をなして化学的防御物質を生産する海藻を探索し、それらを用いてサンゴモ平原に多数生息する植食 動物を排除して海中林の形成を図る必要がある。

[成果の内容・特徴]

  1. ウミウチワとウスバウミウチワのメタノール抽出物の中性部から植食動物に対して強い化学的防御活性をもつジテルペンの一種(III) とビタミンE(IV)を、またウスバウミウチワの酸性部と水溶性メタノール/アンモニア抽出部からはさらに強い活性を持つ不飽和脂肪酸 と結合した2種のフロログルシン(I,II)を発見した(図1)。
  2. 化学的防御活性は、藻体の物理的強度と相関して軟弱なウスバウミウチワのが高かった。
  3. 両種は、西日本沿岸における海藻群集遷移の途中相をなして植食動物を排除することによって海中林の形成に寄与している。

[成果の活用面・留意点]
 西日本沿岸の「磯焼け」化したサンゴモ平原に海中林を造成する際に、これら両種は形成過程にある海中林を植食動物から保護する 技術を開発するための対象種となる。今後、これらの両種の効率的な増殖技術を開発する必要がある。

[その他]
研究課題名:海中林の維持管理技術の開発
予算区分 :大型別枠研究(生態秩序)
研究期間 :平成7年度(平成5~7年度)
研究担当者:谷口和也、關 哲夫
発表論文 :磯焼けの機構と克服技術としての海中造林、野生生物保護、第1巻第1号、37-50、1995.
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