マガレイの産卵場形成と着底場への加入機構


[要約]
佐渡海峡周辺海域におけるマガレイの主産卵場を明らかにすると共に浮遊期卵・稚魚の移送過程を追跡し、当該産卵場起源の仔魚の着底水域を推定した。また、卵・仔魚の集積・着底過程に沿岸に形成される渦流域が関与することが推察された。
日本海区水産研究所・資源管理部・底魚資源研究室
[連絡先]  025-228-0451
[推進会議] 日本海ブロック水産関係試験研究推進会議
[専門]     資源生態
[対象]     ひらめ;かれい
[分類]     行政

[背景・ねらい]
 海産魚類の多くは卵・仔魚期において浮遊生活をおくるが、底棲魚類であるカレイ類の生活史においても変態・着底以前に明瞭な浮 遊期が存在し、これらの浮遊期間に卵・仔魚が産卵場から移送・拡散あるいは集積された後に成育場に着底することが明らかとなってきて いる。本研究は新潟県沿岸域のマガレイを主対象として産卵場形成および成育場への加入機構を明らかにすることを目的として行った。

[成果の内容・特徴]

  1. マガレイの産卵場は水深50m前後の海域を中心として帯状に形成されるが、産卵後24時間内の卵の分布から、陸棚が発達する海域 の上流側縁辺域で特に大規模な産卵が行われることが明らかとなった(図1)。産卵の盛期は3月上旬で ある。
  2. 浮遊期の卵・仔魚は海流により北東方向に移送され、発育段階別分布パターンを見ると、発育の進んだ仔魚ほど東北の海域に分布する (図2)。ADCPによる測流結果から、発育段階の進んだ仔魚は沿岸域に形成される渦流域に蓄積され ることを推定した。
  3. 仔稚魚の着底は陸棚部の水深20~90mの海域で広く行われ、中心は水深50m前後と推定した。分布密度の高いのは浮遊仔魚の集 積域のやや沿岸側にあたり(図3)、渦流域に集積された仔魚はその近傍で着底することを推定した。
  4. 着底稚魚の採集点ごとの体長組成分布から見て、粟島付近を境にして主に北方に分布する小型群とやや南方に分布する大型群が存在し (図3図4)、稚魚の耳石日周輪の解析により、3月上旬の大規模な 産卵を起源とするものは粟島以南に着底する大型群が主体であることが判明した。

[成果の活用面・留意点]

  1. 大規模な産卵場の形成水域とその産卵場起源の仔魚の着底水域が推定できたので、資源管理型漁業を推進する場合の基礎知見として利 用できる。
  2. 漁業資源への新規加入量を稚魚の着底量から推定するための基礎知見として利用できる。

[その他]
研究課題名:異体類の産卵場形成と着底場への加入機構の解明
予算区分 :大型別枠研究(バイオコスモス)
研究期間 :平成7年(平成5~7年)
研究担当者:永澤 亨、藤井徹生
発表論文 :
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