スケトウダラの耳石断面による年齢査定


[要約]
 複数のスケトウダラの耳石を黒色メチルメタクリレート樹脂で埋包して切断し、年齢査定を行う方法によって、ブレイク・バーン法の手間を減らし、しかも輪紋の視認性を損なうことなく、年齢査定作業の効率化をはかった。
北海道区水産研究所・資源管理部・底魚資源研究室
[連絡先]  0154-91-9136
[推進会議] 北海道ブロック水産業関係試験研究推進会議
[専門]     資源生態
[対象]     すけとうだら
[分類]     調査

[背景・ねらい]
 スケトウダラの資源評価を行う上で基礎的な資料となる漁獲物の年齢を調べるために、現在耳石が広く用いられている。近年この耳 石による年齢査定では、耳石断面を焼いて透明帯を茶褐色に変色させて年輪の視認性を向上させる方法(ブレイク・バーン法)が用いられ ているが、この方法は時間と手間がかかるのが問題であった。このブレイク・バーン法の視認性を維持しつつ、耳石の大量処理法を確立し 、年齢査定の迅速化をはかることをねらいとした。

[成果の内容・特徴]

  1. 平行に並べた2本の透明アクリル棒に耳石を接着し(図2)、それを黒色メチルメタクリレート樹脂 で埋包する。不透明な樹脂内部にある耳石の中心を切断するために、透明樹脂を黒色樹脂と組み合わせて(図 1)、アクリル棒の位置を樹脂ブロックの外部から見えるようにし、最適な切断位置を決定できるようにした。
  2. 樹脂ごと耳石を硬組織切断装置で切断し、その断面を観察することによってブレイク・バーン法に劣らない輪紋の視認性が得られた (図3)
  3. 年輪の視認性を維持しつつ一度に複数個の耳石を処理することが可能となり、耳石読輪までにかかる前処理の時間を短縮した。

[成果の活用面・留意点]

  1. 耳石の切断終了までの前処理は、少しの指導で専門家でない素人にもすぐ可能となり、研究者は年齢査定に集中することができ、より 精度の高い年齢査定が可能となった。
  2. 耳石の大量処理が可能となり、年齢査定作業が迅速化されるため、時間的余裕により、標本数を増やしたり、資料の解析により多くの 時間をさくことが可能となる。
  3. 断面ではなく、薄片に加工する必要のある耳石でも、最初の切断面から必要な厚さだけ資料を移動させて2度目の切断を行うことによ って、複数個の耳石薄片を一度に作ることも可能である。

[その他]
研究課題名:主要底魚資源の年齢査定手法の開発
予算区分 :漁業調査取締費
研究期間 :平成7年度(平成6~10年)
研究担当者:矢吹圭三、濱津友紀
発表論文 :未発表
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