親潮索餌域におけるカイアシ類の水温選択およびクロロフィル分布との相関性


[要約]
 夏期の親潮索餌域において卓越するカイアシ類のうち、マイワシの餌として有効な二種の分布水温がそれぞれ異なること、またそれらの分布がクロロフィル分布と相関性を持つことが明らかになった。
北海道区水産研究所・海洋環境部・生物環境研究室
[連絡先]  0154-91-9136
[推進会議] 北海道ブロック水産業関係試験研究推進会議
[専門]     生物生産
[対象]     親潮
[分類]     研究

[背景・ねらい]
 マイワシ索餌域におけるマイワシの主要な餌生物である動物プランクトン量の変動要因を明らかにする。
 マイワシ索餌域である夏季の親潮域の生産性は栄養塩供給量に依存していると予想されているため、表面水温が高く躍層が発達している 年や海域では植物プランクトン密度が低く、それを餌としている動物クランクトンは少なく、表面温度が低いはプランクトン量が多いこと が期待される。この関係から、表面温度によって海域の餌料環境を予想する手法の開発が期待される。

[成果の内容・特徴]

  1. 5年間の親潮水域浮魚資源環境広域調査の結果の解析によってマイワシ索餌域では橈脚類が最も優占し、中でもN.pulumchrus, C. pacificus, Metridia pacifica 優占すること、M. pacificaは夜間にのみマイワシ分布層である表層混合層に出現するため、マイワシの餌料として有効ではないこ とが明らかになった。夏季のマイワシ索餌域では、表面水温14℃以下の地点ではNeocalanus plumchrusが優占し、14~20℃の地点で はCalanus pacificusが優占し、N. plumchrusC. pacificusの分布域は水温によって区別できることが明らかにな った。
  2. 18℃以上の地点では栄養塩が枯渇し植物プランクトンは極めて少ない。そこで、海域を14℃以下、14~18℃、18℃以上の3海域にわけ て重回帰解析を行った結果、動物プランクトン密度とクロロフィル分布の有意な相関性が得られた。さらに各地点ごとの動物プランクトン 密度と経年変化について同様の解析を行った場合、36地点中11地点で環境要因によって有意な相関が得られたが、そのうち9地点がク ロロフィル密度との間に有意な正の相関があった。

[具体的データ]


[その他]
研究課題名:索餌域におけるマイワシの餌料環境の構造と変動様式の解明
予算区分 :大型別枠[生態秩序]
研究期間 :平成7年(平成元~4~7年度)
研究担当者:齋藤宏明・葛西広海・川崎康寛・河野時廣
発表論文 :
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