動物プランクトンの生活様式と紫外線に対する感受性


[要約]  冷水性日周鉛直移動型、暖水性日周鉛直移動型および暖水性終生表層分布型の生活様式を持つカイアシ類の紫外線に対する感受性を調べ、日周鉛直移動型の種では、ふ化率が紫外線照射量の増加とともに低下することが明らかになった。
北海道区水産研究所・海洋環境部・生物環境研究室
[連絡先]  0154-91-9136
[推進会議] 北海道ブロック水産業関係試験研究推進会議
[専門]     生物生産
[対象]     動物プランクトン
[分類]     研究

[背景・ねらい]
 オゾン層の破壊による紫外線の増加が海洋生態系に与える影響を評価するために、冷水性鉛直移動型橈脚類,暖水性鉛直移動型橈脚 類および暖水性終生表層分布型橈脚類に紫外線が与える直接的影響を調べる実験を行い、生活様式によってどのような影響を与えるかを明 らかにする。

[成果の内容・特徴]
 冷水性日周鉛直移動性、暖水性日周鉛直移動型および暖水性終生表層分布性橈脚類のそれぞれについて紫外線が与える影響について 調べた。冷水性および暖水性鉛直移動性橈脚類はともに紫外線ドースとともに孵化率および生残率が反シグモイド型で低下することが明ら かになった。紫外線の影響はB領域紫外線(UVB)によってみられたが、特に短波長側の影響が大きい。また、成体よりも卵で紫外線の 影響を受けやすく,卵でも発生初期の卵ほど影響が顕著に現れた。ドースが大きい場合には孵化した個体の奇形率も高かった。また、日周 鉛直移動性の橈脚類成体の生残に与える紫外線の影響は、小型種ほど大きい傾向にあった。これに対して終生表層生息性の橈脚類では、現 在のレベルの紫外線によっては、孵化率、産卵率、生残率のいずれにおいても影響がみられなかった。終生表層生息性の橈脚類では、日周 鉛直移動性橈脚類に比べてカロチノイド色素およびマイコスポリン様色素含有量が高かったことから、終生表層生息性の橈脚類は紫外線防 御物質を多く含有することによって紫外線の強い表層に生息することが可能になったと考えられる。これらの結果から紫外線の増大は、特 に日周鉛直移動性橈脚類の再生産に大きな影響を及ぼすことが考えられ、さらに動物プランクトン種の組成に影響を与えることが示唆され る。
(図1)


[その他]
研究課題名:紫外線増加が動物プランクトンに及ぼす影響の評価に関する研究
予算区分 :環・地球環境
研究期間 :平成7年度(平2~4~7年度)
研究担当者:齋藤宏明・葛西広海・田口 哲(創価大)
発表論文 :
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