- 会議名: 平成21年度内水面関係研究開発推進会議
- 会議責任者: 中央水産研究所長
- 開催日時: 平成21年12月10日13:00~11日11:30
- 開催場所: 栃木県総合文化センター(宇都宮市本町1-8)
- 出席者所属機関及び人数: 24機関 43名
結果の概要
- 1.各機関からの情勢報告(1)
- 水産庁研究指導課、全国内水面漁業協同組合連合会(以下、全内漁連)、独立行政法人水産総合研究センター(以下、水研センター)から、最近の水産業および各機関を巡る情勢等について報告があった。
- 水産庁からは、平成22年度予算要求概要、省エネ・省コスト対策、大型クラゲ等の有害生物対策、水産庁委託事業関係、アサリ資源全国協議会、地域水産試験研究振興協議会、農林水産技術会議事務局関係の競争的研究資金制度の見直し、水産分野における地球温暖化対策関係、等の報告があった。
- 全内漁連からは、河川環境対策、特定外来生物駆除問題、カワウ駆除対策、アユ冷水病及びコイヘルペス病対策についての説明があった。また今年度より、財団法人農林統計協会と連携して内水面生産統計調査業務を開始した旨の報告があった。
- 水研センターからは、水産ゲノム研究拠点の整備およびクロマグロ全ゲノムDNA塩基配列の解読に着手したこと、地域水産加工技術セミナーの開催、水研センターの組織改編および次期中期計画への取り組み、農林水産技術会議事業関係の新規研究課題、国際研究機関との交流、などについての説明があった。
- 2.平成20年度推進会議のフォローアップに関する報告
- 内水面研究部長より、内水面漁業生産統計に関して、遊漁採捕量を公式統計に含ませることは現状では困難であるとの説明があった。関連して、中央ブロック推進会議でも、漁獲統計問題が議論され、これへの対応は各地方研究機関から行政を通して水産主務課長会議等に問題提起してはどうか等との結論となったことが紹介された。
- シジミ資源増殖研究については、農林水産技術会議の「新たな農林水産政策を増進する実用技術開発事業」に採択され、今年度より研究を開始したとの報告があった。
- 河川下流域における生態系及び生物生産に関する研究・ウナギ資源管理研究については、水研センター交付金プロジェクトに応募したがいずれも不採択となり、今後も引き続き研究会での議論を深め課題化を目指す旨の報告があった。
- マス類養殖技術研究については、農林水産技術会議の「新たな農林水産政策を増進する実用技術開発事業」に採択され、県・大学との参画を受け今年度より研究を開始したとの報告があった。
- 3.各機関からの情勢報告(2)
- 全国内水面水産試験場長会5ブロック代表県、全国内水面水産試験場長会、全国湖沼河川養殖研究会、養殖研究所、さけますセンター、水産工学研究所、中央水産研究所より情勢報告があった。
- 東北・北海道ブロックからは、シシャモ・サケ漁獲量の回復、KHV発生件数、アユ遡上量の近況、カワウ生息地の拡大等についての報告があった。予算縮減が求められる中、多くの県で職員数の削減、県単研究費の漸減、研究経費の高額化などが研究実施の上で問題になっているとの報告があった。
- 関東・甲信越ブロックからは、アユ遡上量・サケ漁獲量の近況、KHV、冷水病発生状況、カワウ対策、コイ・ホンモロコ・信州サーモン養殖の状況、等について報告があった。各県の共通する課題として、研究の推進に必要な人材・予算の確保が挙げられた。
- 東海・北陸ブロックからは、アユ遡上量の近況、冷水病・KHV病、外来魚駆除活動、サクラマス漁獲量の回復、カワウの食害状況、ニジマス・ドジョウ・ウナギ・ナマズ・金魚養殖の状況について報告があった。各県とも多くの研究課題を抱える一方で、研究費の削減、組織再編、定数削減などの厳しい状況が続いているとの報告があった。
- 近畿・中国・四国ブロックからは、アユ遡上量・シラスウナギ漁獲量の傾向、KHVの発生状況、吉野川・宍道湖のシジミ漁獲量の状況、淀川でのイタセンパラの再生活動、ホンモロコ・ドジョウ養殖、等について報告があった。各県ともに、研究費・研究員の減少傾向が続いている現状が述べられた。
- 九州ブロックからは、アユ遡上量・シラスウナギ漁獲量の近況、冷水病・KHV病の発生状況・福岡県のハヤ・ヒナモロコ・エツの種苗生産、等について報告があった。
- 全国内水面水産試験場長会からは、今年度の活動状況についての報告があり、平成23年度水産庁等への要望事項について説明がなされた。
- 全国湖沼河川養殖研究会からは、組織運営体制と今年度の活動状況について報告があった。
- 養殖研究所からは、水産増養殖関係研究開発推進特別部会の報告、組織運営体制、研究プロジェクトと各種事業についての説明があった。
- さけますセンターからは、今年のサケ・カラフトマス・サクラマス来遊数の近況、研究開発課題の概要、国際会議への対応、さけます関係研究開発等推進特別部会の報告等がなされた。
- 水産工学研究所からは、水産工学関係研究開発推進特別部会の報告、水産工学研究所を巡る情勢報告、水産試験場等から提案された水産工学関係の研究開発ニーズ等について報告があった。
- 中央水産研究所長より、中央水産研究所各研究部の活動、平成21年度新規研究課題の概要、業務運営等についての報告があった。また、内水面研究部より、農林水産技術会議・新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業のうち、平成21年度からの新規事業「環境変化に対応した砂泥域二枚貝類の増養殖生産システムの開発」および「生体防御能向上と飼育環境制御による安全・安心なマス類養殖安定生産技術の開発」についての概要説明がなされた。
- 4.平成21年度資源・生態系保全部会の報告
- 内水面研究部長より、平成21年度内水面関係研究開発推進会議 資源・生態系保全部会の概要説明があり、部会での議論が不十分であった研究開発ニーズについて以下の対応が示された。和歌山県から提案の水産資源に適したダム放水方法の確立については、今後中央水研海洋生産部と連携をとりながら課題化および外部予算獲得に向け模索したい。滋賀県から提案の湖沼における魚介類の資源評価に関する研究については、中央水研資源評価部が毎年行っている資源管理研修会にまずは参加されたい。群馬県から提案の、ワカサギ資源管理手法に関する研究については、農林水産技術会議の実用技術開発事業(現場提案型)への応募を検討してはどうか。課題化にあたっては内水面研究部も積極的に協力したい。
- 資源・生態系保全部会の報告が研究開発ニーズの整理とともに承認された。
- 5.平成21年度内水面養殖部会の報告
- 内水面研究部長より、平成21年度内水面関係研究開発推進会議 内水面養殖部会の概要説明があった。新潟県からの提案課題「錦鯉におけるKHV高感度検出技術の開発」に関して、養殖研究所魚病診断研修センター長より血液からKHV病キャリアを検出する方法を開発した、との報告があった。
- 内水面養殖部会の報告が研究開発ニーズの整理とともに承認された。
- 6.平成21年度研究成果情報の取りまとめ
- 長野県から、部会で未検討のままであった成果情報について概要説明があった。平成21年度内水面分野の研究成果情報候補課題の6課題については、すべて成果情報として承認された。
- 7.推進会議で検討を要する事項に関する協議
- 内水面研究部長より、本推進会議で検討を要する課題等について説明があり、その対応案が示された。
- 各地方研究機関より、内水面研究の方向性、水研センターに対する要望、研究面での役割分担、予算獲得に関する意見等が述べられた。
- 内水面研究の方向性については、今後は内水面漁業・養殖業のための研究のみならず、国民一般を受益者とした内水面漁業の有する生態系サービス機能など、いわゆる多面的機能の評価に関する研究も重要とする、内水面研究部と一致した意見も多く述べられた。
- 地方と水研の役割分担に関しては、地方は現場対応型応用研究、水研は基礎的・先導的研究という認識はほぼ共通していた。
- これらに対して内水面研究部長より、役割分担と共に連携も重要であることから、内水面研究部は水産庁や技術会議等の事業等においても中核的役割を果たしつつ地方研究機関との連携を率先して行っている。今後も推進会議部会・研究会等を活用した一層の研究連携を図りたい、また、内水面環境の保全・修復に関して要望のあった、河川管理者と生物・環境研究者の情報・意見交換については、次年度の部会での実現を検討中である、外部資金獲得に関しては水研センターの役割をさらに強化したい、若手研究者の育成の場となるような研修や研究会等も検討したい、などの回答があった。
- 8.その他
- 内水面研究部長より、次回の資源・生態系保全部会・内水面養殖部会について、上田市で平成22年10月28-29日に開催予定であることが報告された。
- 内水面関係研究開発推進会議本会議については、次回は報告部分を簡略化し会議を1日で終了させたい旨の提案があり、今後検討されることとなった。