- 会議名: 平成21年度中央ブロック水産業関係研究開発推進会議
- 会議責任者: 中央水産研究所長
- 開催日時: 平成21年12月1日(水)13:00~2日(木)12:15
- 開催場所: 中央水産研究所 横浜庁舎講堂
- 出席者所属機関及び人数: 21機関 43名(水研センター関係の7機関27名を含む)
結果の概要
- 開会
はじめに中央水研所長から開会挨拶があり、この中で予算人員の削減をはじめとした厳しい状況下、関係機関がいかに連携・協力して研究開発を進めて行くかが大切であるとのコメントと、これらに対して中央水研を含む水研センターが今後も積極的に取り組む方針であることが述べられた。
来賓とし水産庁増殖推進部参事官から、日頃の研究開発に関してのブロック関係機関の協力に対して謝意が述べられると共に、今夏の政権交代に伴い農水省を取り巻く情勢が日々めまぐるしく変化しており、今回行われた事業仕分けにより今後の予算方針と事業見直しが本格化する中で、必要なものは必要であることを主張して行くつもりである。年明けには独法の見直しも始まる予定で、研究者は自らの研究調査の必要性を外部に対して分かりやすく説明し、理解を得ることがますます重要になって来ていると挨拶があった。
- 1.報告事項
- (1)各機関からの情勢報告
- 中央水産研究所
中央水研から資料に基づき、各部・センター・船舶の業務状況、プロジェクトや調査の推進情勢、研究成果の広報や事務処理の効率化への取り組みについて説明があった。
- 水産庁研究指導課
水産庁から資料に基づき来年度予算要求の状況、今年度の省エネルギー技術導入促進事業また今後に向けた省エネ支援事業の動き、大型クラゲやザラボヤ等の有害生物対策事業概要、また今後の委託事業についてはほとんどが総合評価方式に変わって行く予定であること、アサリ資源全国協議会の活動、農林水産技術会議の競争的資金の来年度の変更点について説明があった。農水省の組織改編に関する質問があり、農林水産技術会議組織は大臣官房への位置替えが予定されている等の情報提供があった。また、地域活性化型の予算要求規模について質問があり、新規要求は厳しいのではないかとの回答があった。
- 水研センター本部
水研センター本部から資料に基づき、次世代型高速遺伝子シークエンサー導入による水産ゲノム研究拠点の整備、水産加工技術セミナーの実施状況、委託事業の適正な実施についての問題点と水研センターとしての対応方針、水研センターの最近のトピック、および来年度予算と研究推進方針、国際研究協力の現状、次期中期計画検討の進捗状況について概要説明があった。
- ブロック構成各都県
中央ブロック各都県から資料に基づき、水産業、調査・研究推進および研究トピックに関する情勢の報告があった。
- 千葉県からイワシ類の水揚げが多いこと、東京湾にシャットネラ属と思われる赤潮が発生したこと、ウミグモ被害が続いていること、千葉丸の代船が進水したことなどが報告された。
- 東京都からカツオ曳き縄漁が3年連続の不漁であること、八丈海域でキンメ釣りに転換していること、などが報告された。
- 神奈川県からアワビの漁獲が減少したこと、エチゼンクラゲが来襲・定置網に影響したこと、東京湾漁場環境総合調査を開始したこと等が報告された。
- 静岡県からサクラエビ漁業がマリンエコラベルの認証を受けたこと、シラス漁が当初不漁であったこと、エチゼンクラゲが4年ぶりに来襲したことなどが報告された。
- 愛知県からはイカナゴ漁の不漁、アサリ漁獲量が全国一、ウミグモ寄生がごく一部で確認(寄生率は低下した)などが報告された。
- 三重県から真珠や高級魚介類の価格低下、イカナゴ漁の不漁、シャトネラ属赤潮が増加傾向、科学技術振興機構の競争的資金を獲得したことなどが報告された。
- 和歌山県から黒潮や沿岸水温の変動、シラス漁の不漁、カツオ曳き縄漁の不漁、くえの種苗生産や梅マダイの現状などについて報告された。
- 徳島県からテングサの激減、シラス魚群マップ配信システム開発事業の状況、海水シャーベット氷の活用法の検討などについて報告された。
- 高知県からカツオ漁の不漁、寒ブリの好漁、新調査船による魚礁の精密位置調査、などについて報告された。
- 愛媛県から認定漁業士を中心とした販売まで見越した生産体制の創設、文科省産学官連携促進事業に採択などについて報告された。
- 大分県からマアジ・サバ類が低調、珪藻等赤潮の発生、カワハギ試験養殖、課題の削減(約3分の1)などについて報告された。
- 宮崎県からカツオ漁の不漁、ビンナガ漁の好漁、漁場位置予測システムの精度向上などについて報告された。
- 鹿児島県から大規模なシャトネラ赤潮被害発生、カンパチ種苗量産化に目処、瞬間通電加熱技術の開発(実用技術開発)が採択などについて報告された。
- その他
その他として、北水研から、ザラボヤの大量発生による養殖ホタテガイへの被害状況と対応に関する情報提供があった。
- (2)平成20年度における協議事項等のフォローアップ
中央水研から資料に基づき、昨年度確認された、中央ブロックとして取り組むべき6つの事項に関するその後の対応状況等について報告があり、特段の意見はなく、了承された。
- (3)各部会からの報告
中央ブロックの海洋環境・漁業資源合同部会と浅海増殖部会の概要報告および研究ニーズへの対応について、それぞれ部会長から報告された。これらに対する特段の意見はなく、了承された。また、平成21年度中央ブロック研究成果情報21課題について、今年度からの取り扱い方針にしたがい、各部会担当部長から内容検討状況と、指摘事項のあった課題については、今後修正を行い、年度末までに完成させることとする等の報告があり、当ブロックの研究成果情報として承認された。
- 2.協議事項
- (1)研究ニーズ・要望事項
- 1)水産用医薬品の開発体制の整備・対象魚種の拡大について(愛媛県)
養殖研から、本年度から魚病部会の下に「水産医薬品開発促進連絡会」を設置して現場とメーカーとの橋渡しをする取り組みを開始した等、対応状況について回答があった。これに対し、水研センター本部からセンター内での取り組みの状況について、対象を種あるいは属等どのレベルまでの設定かとの質問があった。また宮崎県からは、県内の他部門との連携状況について情報提供があった。三重県からは、カワハギ等魚種によっては使用可能な薬剤がほとんどなく、対応に苦慮しており、ぜひこの取り組みを推進して頂きたいとの意見があった。和歌山県から、マダイ養殖について価格低迷により医薬品は使われていないことと、養殖魚種拡大等の情報提供に加えて、VNNワクチン開発の進捗状況について質問があり、養殖研から現状報告と愛媛県から関連情報の提供があった。この他、今回の取り組みについての異論はなく、了承された。
- 2)温暖化による生物分布予測研究・モニタリング体制の確立について(東京都)
中央水研から、水産庁補助事業や農林水産技術会議の委託事業に関する情報提供を行い、温暖化に関する新規の事業やプロジェクト募集があった際には各都県と情報交換をしながら応募等を考えていきたいと回答があった。また生物分布の変化については、関連する水工研のプロジェクト研究等の紹介と共に、今後の各機関との連携強化についてさらなる協力要請があった。水産庁から海洋モニタリングについて、「強い水産づくり交付金」等の予算措置の現状報告と、また最適のモニタリング体制の見直しに向けての意見を頂きたいとの要請があった。また、水研センター本部から、予算に関連して昨今の情勢から見て、都道府県知事の姿勢が大きな影響を与えることを念頭に置いて、今後は行動をして行く必要があるかも知れないとのコメントがあった。
- 3)沿岸資源管理研究の推進・研究会や研修会の開催継続について(和歌山県と高知県)
中央水研、資源評価調査事業の資源動向調査の枠組みを利用すれば沿岸資源であっても複数県であれば取り組むことが出来るので、ムロアジ等でワーキンググループを設置して取り組んでいるところ。これにより調査の効率化も図れることを委託元にも説明し、平成23年度より始まるであろうポスト資源評価調査事業にこのようなメニューを加えるよう要望している所である。また、若手研究者育成のための研究会等については、今後いくつかの関係研修会を開催する予定であり、新たな要望にも出来る限り対応して行くつもりであるとの説明があった。沿岸資源の管理体制については、沖合とは異なり、沿岸資源は漁業管理だけでなく環境管理や資源増殖といった方策を有機的に組み合わせた複合管理方策の策定が必要とのご指摘は当を得た指摘であり、このような提言に賛同するとの発言があった。
また沿岸資源管理について、沖合資源との比較した漁獲データの入手や環境管理面での特徴と問題点が述べられ,総合的管理を目指すとする今回県から提示された意見に同感であり、沿岸域の海洋環境モデルを利用した研究展開の可能性及び現在海洋データ解析センターで開発中のネスト型の沿岸(流動)モデルの利点についての説明があった。さらに、沿岸海洋で海洋に対して陸域が果たす役割のデータ解析も重要であるのではないかとのコメントがあった。水研センター本部から、沿岸域での生物の営みを考えると、資源に対する自然と人間による添加であることから総合的に考えるべきものが分離して扱われて来たきらいがあり、水研センターとしては第3期に向けて、県からご提案のあったことを含めて検討したいとの協力依頼があったこれらに関連して以下のコメントがあった: 陸域からの影響についてはやはり今後水産だけではなく、総合的に考えて行くべきで、また沿岸域のモニタリングも重要(和歌山県)、安定的な研究資金の確保について、従来のやり方にとらわれず、予算を出す側への働きかけが組織として今後はより重要になって来る(水研センター本部)、この様な取り組みは人材育成の視点からも重要(高知県)。最後に中央水研から、関連したシンポジウムの案内と協力依頼があった。
- (2)ブロックとして協議したい事項
- 1)水産統計の今後について
中央水研から資料に基づき、水産統計の見直しについての説明と今後の国レベルの水産統計の動向について情勢提供があった。続いて各都県からアンケートに基づいて報告があり、この中で限られた人員・予算の中で地域重要魚種にどう対応するか、今後のデータ取得の自助努力に向けた全国で比較可能な基準の必要性、取得したデータ処理におけるソフトの共通化の必要性、漁協合併に伴う従来のデータとの整合性と連続性、県の行政施策立案面での支障、等の問題点の指摘があった。
これを受けて、中央水研から、これまでの統計調査の情勢変化の経緯を振り返り、元に戻すことは事実上出来ないという視点に立ち、各都県でデータ取得と共通基準での対応とそれをまとめる場が必要であり、例えば地域水産試験研究協議会の場を利用するなど、について考える時期に来ているのではないかとのコメントがあった。
続いて意見交換が行われ、水産庁から、昨今の地方への権限委譲という趨勢から見て、統一的なものは地方から提案されるのも一つの方法であると思われること、北水研から北海道ブロックの情勢の紹介が、中央水研から、高度化事業等で技術的な面をカバーする等の方法もあるのでは、宮崎県から、これは資源研究に限られる小さな問題ではなく、国レベルの行政面を含む大きな問題として扱うべき、東京都から、統計は研究よりは水産行政の根本を成すものであるとの認識が必要である、水産庁から、地域水産試験研究協議会で統計問題を扱うかとのコメントについては、各ブロックの事務局から全国レベルに集約して行けば対応出来るのではないか、などの意見が出された。
今後の方向として、中央水研から資源評価のブロックで話しをして、統一的に話を上げて行くのはどうか、愛知県から、統計情報の一元化については試験場ではなくて行政サイドが主体であり、やはり水産庁から県の行政に当たって行くのが良いのでは、水産庁から、行政サイドのルートについては検討して見たい、三重県から東海ブロックでは特に議論はしていないが、基本的に行政施策の問題なので、都道府県の主務担当のルートで上げて行くのが良い、などの意見が出された。最後に、水産統計は行政施策上、重要であるので、各都県の主務担当ルートで上げることを検討することと、場長会ルートを通じて問題提起を行っていくことを検討すること、水研は他のブロックの資源関係の会議で問題提起を行っていくこと、とすることとした。
- 2)多面的機能について
水産経済部長から、今回のアンケートの背景として、①水産業・漁村が持つ多面的機能に関する基本的認識の整理、②昨今の多面的機能関連の動き(特に離島漁業再生支援交付金制度、藻場・干潟、サンゴ礁の保全・回復活動への財政支援)、③政策議論の新たな展開と課題の所在、等について説明があった。続いて、各都県からアンケート回答内容について補足を含めて説明があり、この中で試験研究機関という性格の中で、多面的機能のみを取り上げて課題化する事例は少ないが、研究開発課題の推進を通じて金銭的には換算出来ないものの効果を生んでいる事例もあることが示された。水産経済部長から水産業・漁村が持つ多面的機能に着目して水産業振興を図っていくためには社会科学系と自然科学系が一体となった研究課題推進が必要であるが、特に①各種交付金による活動の属性把握と検証、②多面的機能の評価制度の検討、および③水産業への貢献度を高めるための制度や支援ツールの検討、の3点について提案があり、協議した。協議では主に、都県における情報の整理と共有化の方法、研究者間における多面的機能に関する共通認識の醸成方法について意見が交わされた。それを受けて、今後は中央水産研究所水産経済部が事務局機能を担っている「水産経済連絡会」のメーリングリストも利活用してブロック内の多面的機能に関する情報、意見を収集するとともに、今後は水産業振興、地域振興に向けた取組み課題として検討することとなった。また関連して、中央水研所長から多面的機能について、今後の工夫により潜在的な機能の発掘も期待されるので、この点についても留意頂きたいとのコメントがあった。
- 3)ブロックにおける国と地方との仕分けのあり方や本会議出席の旅費について
中央水研より、昨年からの地方分権や独法見直しの過程で、地方と国と独法のあり方(仕分け)が問われていること、現政権でも地域主権として独法業務のあり方(地域や民間で出来ないかなど)が問われているとの背景説明があった。続いて、国と地方の仕分けについて各都県からアンケートに基づいて報告があり、この中で今後は地方であっても国全体として考えるべきである、基礎と応用といった役割分担というよりはその機関が持っているものや出来ることを示すのが重要、分担と連携は本来一体のものであることを忘れるべきではない、漁海況モニタリングについては特に仕分けが必要、等の意見が出された。また、中央水研から、定点観測について衛星データの効率的利用と、観測地点だけでなく調査船の効率的運行のためには観測時期の検討が必要ではないか、県のデータをモデル作成における精度向上のために県の定線データが必要であり、互いの連携協力が重要であるとのコメントがあった。旅費については、推進会議に出席するための理由付けが年々難しくなって来ているが、少なくとも単なる協議で終わらない会議運営を通じて対応して行きたい、またどの様な会議であれば県の旅費が出しやすくなるのか情報交換が必要とのコメントがあった。仕分けについて本部経営企画部長から、水研センターの機関評価会議の中で、沿岸の事項は県に属する事項であるとの意見が出されたこと等もあるが、それぞれの機関が持っている技術やデータをどの様に生かして行くかが重要であり、連携と分担について今一度良く考えて、外部に対して発信をして行きたいと考える:また旅費については、それぞれの都県での説明が重要であるので、会議出席が重要であることを主張する方向を自ら目指すべきとのコメントがあった。
最後に中央水研より、結論のでない事項であり、今回は意見交換に留めるが、中央水研としては都道府県との仕分けを考慮した上で連携・協力関係を構築して共通する課題を解決していきたいこと、旅費については、参加する意義のある会議とするよう努力すること、と述べてこの協議を終了した。
- 4)現場対応型の研究協力について
中央水研から、各県共通の問題であるが、今後は都道府県の企画力と実行力が問われることが予想されることから、必要部署・業務の見直しとその後の人材投入・資質向上を実行すべきであること、また漁家利益の増加対策としては内容の仕分けと情報共有化への環境を整えるしくみが必要であるとの回答があった。また、中央水研でも水産経済での研修を行っているので、ご利用頂きたいとのコメントがあった。また、水研センター本部から、県においては資源管理だけでなく、経営としてどうなって行くのかは重要であり、資源等の試験研究により努力解決するものと漁家の努力解決するものを見極めて考える必要、県において他の省エネ等で該当研究分野がない場合には積極的に関係推進会議等に参加されると良いとのコメントがあった。徳島県からは、昨今速効での成果が求められる中で、今後も相談させて頂きたいとのコメントがあった。
この他、特段の意見は出されず、回答案は了承された。
- 3.その他
愛媛県から養殖魚疾病・医薬品の議題中の認可されたVNNワクチンはマハタを対象としたもので、魚種拡大(ハタ類)を働きかけているとの追加コメントがあった。
- 閉会
中央水研所長から閉会の挨拶があった。