平成18年度内水面関係研究開発推進会議資源・生態系保全部会報告

会議責任者中央水産研究所長
開催日時及び場所日時日時 平成18年10月26日 13:15~18:00
27日 8:45~14:30
場所ホテル祥園(長野県上田市大手1-2-2)
出席者所属機関及び人数     34機関 55人
結果の概要
議題結果の概要
1.学術講演会 東京都葛西臨海水族園 飼育展示課主任(関東カワウ広域協議会科学委員)の福田道雄 先生より,「カワウとはどのような鳥か-その生態と現状-」と題し,講演があった。カワウの採食・繁殖生態の他,日本における生息状況について情報提供があった。
2.情勢報告 水研センター本部 業務企画部の佐野 研究開発コーディネーターより,次年度の水産庁事業の取り組みについて報告があった。水産庁事業については,水研センターが中核機関となって課題提案し,各県試験研究機関と再委託契約を結ぶことにより研究チームを編成したいとの説明があった。
3.各機関の新規研究課題の紹介 参加機関の県単予算による平成18年度新規研究課題の概要が紹介された。
4.報告と協議
(1)次年度予算獲得に向けた中央水研内水面研究部の考え方の紹介
内水面研究部長が外部予算獲得に向けた今後の取り組み方針を紹介した。
外部研究予算の獲得に向けては,中央水研内水面研究部が中核機関となって各県試験研究機関および大学による研究チームを編成し,各県の研究ニーズを参考に企画提案してゆきたいとの説明があった。また,研究チームの編成に当たっては,研究ニーズや研究素材を提出した機関を中心とし,研究水域の妥当性,地域振興との関連および機関の研究実績等を考慮するとの説明があった。
内水面研究部長が収集した各県の研究素材および全内漁連からの研究要望について報告があった。
(2)アユの増殖に関すること
中央水研内水面研究部より,アユ資源に関するワーキンググループの平成18年度活動状況について報告があった。
地方水試による,これまでのアユ冷水病に関する調査・研究結果の取りまとめ(案)について説明があった。
水産庁「環境調和型アユ増殖手法開発事業」のうち「環境収容力および資源管理」については,平成19年度まで事業期間が延長され,本年度は過去5年間の事業成果の取りまとめを行うとの説明があった。
先端技術を活用した農林水産研究高度化事業「沿岸域におけるアユ生態特性の解明および遡上量予測技術の開発」について,事業の概要およびこれまでの主な研究成果の説明があった。
アユの増殖に関する4件の研究ニーズが提出された。内水面研究部から,栃木県からの研究ニーズについては平成19年度新規の水産庁事業企画案中で,群馬県からの研究ニーズについては平成20年度新規の水産庁事業企画案の中で,それぞれ取り扱いを検討するとの説明があった。また,神奈川県と静岡県から提出された沿岸海域におけるアユの資源生態研究については,高度化事業(「アユ遡上量予測」)の成果を踏まえ新事業や後継プロ研の課題化の中で検討していくとの説明があった。
アユ冷水病に関連する4件の研究ニーズが提出された。養殖研病害防除部より,感染環の解明,被害軽減対策およびブロノポールの卵消毒剤としての有効性試験については,アユ冷水病対策協議会にて研究が進められており,今後も必要に応じて研究が継続されるだろうとの説明があった。また,耐病性遺伝子マーカーについては,高度化事業「アユ冷水病形質マーカー選抜育種技術の開発」で研究中であること,遺伝的多様性の保全を配慮した種苗放流管理については,水産庁「健全な内水面生態系復元推進事業」のうち「アユの遺伝的多様性保全指針作成調査(H12~16)」の成果を適用できるとの説明があった。
中央水研内水面研究部が作成した平成20年度新規の水産庁事業企画案「アユ漁不振漁場の実態解明および漁場環境評価手法の確立(仮称)」の説明があった。なお,研究フィールドに関係する漁協の理解・協力を取りつけているかどうかも本事業への参加条件にしたい,また水産庁が本企画案に沿った事業予算を要求することが明らかになってから事業チームへの参加機関の内定作業に入りたいと内水面研究部長が述べた。
以下の報告と協議は27日に実施した。
(3)外来魚に関すること
中央水研内水面研究部より,水産庁「ブルーギル食害影響調査事業」の5カ年の事業成果および残された問題点について報告があった。
中央水研内水面研究部より,水産庁「移入種管理方策検討委託事業」の4カ年の事業成果について報告があった。当該事業は平成18年度で終了し後継の水産庁事業も無いことを受け,茨城県,千葉県,埼玉県および北海道が,今後の移入種対策への取り組み方針について説明した。協議の結果,北海道でのブラウントラウトによる生態系かく乱等の問題解決を柱としたプロ研素材作成について北海道が検討すること,そのための関連資料の一部を中央水研内水面研究部が提供することになった。
参加機関より外来魚に関する7件の研究ニーズが提出された。これらについては,平成19年度新規の水産庁事業企画案の中で取り扱いを検討するとの説明があった。
中央水研内水面研究部より,外来魚研究会の平成18年度活動状況について報告があった。
中央水研内水面研究部より,平成19年度新規水産庁事業「外来魚抑制管理技術開発事業(仮称)」の企画案について説明があった。当該事業に参加を希望する機関は,11月中に外来魚研究会を通して研究素材を提案することになった。新規事業実施に当たり,外来魚駆除に関わる市民団体との連携および事業成果の迅速な発信に留意してもらいたいとの意見が出された。
(4)環境に関すること(カワウを含める)
中央水研内水面研究部より,中央水研所内プロジェクト研究「人為的な河川環境改変がわが国の内水面漁業に与える影響に関する実態把握とデータベース作成」の研究成果について報告があった。当プロジェクト研究の成果は,インターネット上で公開するとの説明があった。(http://www.nrifs.affrc.go.jp/kasen/kousaku/index.html)
参加機関より内水面環境に関する6件の研究ニーズが提出された。中央水研内水面研究部より,栃木県・茨城県の研究ニーズについては中央水研内水面研究部が実施中の一般研究の担当者が個別に対応する,長野県の研究ニーズ(諏訪湖におけるワカサギ繁殖期の変動)については,長野県と共同して中央水研内水面研究部内で外部資金獲得を検討する,長野県と北海道の研究ニーズ(湖沼環境)については中央水研内水面研究部が作成した新規プロ研企画案の中で検討する,群馬県の研究ニーズについては平成20年度新規の水産庁事業企画案の中で取り扱いを検討するとの説明があった。
中央水研内水面研究部より,河川環境研究会の平成18年度活動状況について報告があった。併せて,関東カワウ広域協議会の平成18年度活動状況について説明があった。
参加機関よりカワウに関する2件の研究ニーズが提出された。カワウ被害を軽減する内水面環境について明らかにする研究課題を河川環境研究会の中で検討していくとの説明があった。なお,滋賀県より,カワウ駆除法(空気銃・テグスの利用)に関する情報提供があった。
中央水研内水面研究部より,湖沼環境に関する新規プロ研企画案「湖沼漁場の多目的利用に伴い発生するトレードオフ関係の把握と対策手法の開発」について説明があった。今後,河川環境研究会のネットワークを通して本企画案についての意見や情報を収集することになった。
(5)資源管理・資源増殖・多面的機能・生物多様性に関すること
参加機関より漁場・資源管理(アユ以外)に関する6件の研究ニーズが提出された。中央水研内水面研究部より,福岡県・埼玉県の研究ニーズについては平成19年度新規水産庁事業企画案の中で取り扱いを検討する,栃木県と長野県の研究ニーズ(渓流域漁場管理)については現在実施中の水産庁事業「渓流域管理体制構築事業」で対応している,長野県の研究ニーズ(ワカサギ資源安定化)については中央水研内水面研究部が実施中の一般研究の担当者が個別に対応する,島根県の研究ニーズ(シジミ資源管理)については地方水試が形成しているシジミ研究会で対応中であるとの説明があった。
中央水研内水面研究部より,平成19年度新規水産庁事業企画案「内水面生態系等に配慮した増殖指針作成事業(仮称)」について説明があった。本企画案は11月中に成案とすることになった。
中央水研内水面研究部より,水産庁事業「渓流域管理体制構築事業」の4カ年の事業成果の報告があった。また,平成20年度新規の後継の水産庁事業企画案については,11月15日までに研究素材を収集し素案を作成することになった。
参加機関より多面的機能に関する1件の研究ニーズが提出された。中央水研内水面研究部より,研究ニーズに対し,参加機関の情報交換を図ることにより対応してゆきたいとの説明があった。
参加機関より生物多様性に関する4件の研究ニーズが提出された。中央水研内水面研究部より,研究ニーズに対し,参加機関の情報交換を図ることにより対応してゆきたいとの説明があった。
中央水研内水面研究部より,遺伝子解析によるイワナ個体群の在来・非在来の判別技術について説明があった。内水面漁業関係者より遺伝子解析について各県の研究機関に依頼があった場合,遺伝子の抽出サービスを行う方向で検討することになった。
(6)サクラマス研究会に関すること
中央水研内水面研究部より,サクラマス分科会発足の経緯およびその概要について説明があった。また,水研センター平成19年度新規プロジェクト研究「本州日本海域サクラマス資源回復プログラムの開発」の課題提案について報告があった。
(7)研究成果情報に関すること
提出された11課題の研究成果情報について,各機関から説明があった。協議の結果,2課題については採択,7課題については軽微な修正を条件に採択,2課題の採択については大規模な修正を求めることから内水面研究部長預かりとし,内水面関係研究開発推進会議に報告することが承認された。
(8)その他
その他の協議事項は提案されなかった。
5.その他
次年度の部会は上田市内で10月第4週(木・金曜日)に開催すること,および部会の2日目の終了時刻については状況に応じて変えることが了承された。

nrifs-info@ml.affrc.go.jp

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