平成18年度内水面関係研究開発推進会議報告書

会議責任者中央水産研究所長
開催日時及び場所日時平成18年12月14日13:30~15日12:30
場所(株)アピア(宇都宮市戸祭元町12-12)
出席者所属機関及び人数     25機関  39名
結果の概要
議題結果の概要
1.各機関からの情勢報告(1)
水産庁研究指導課、全国内水面漁業協同組合連合会(以下、全内漁連)、水産総合研究センター(以下、水研センター)から、最近の水産業および各機関を巡る情勢等について報告があった。
水産庁からは、水産基本計画と水産研究・技術開発戦略の見直し作業、地域水産試験研究振興協議会の設置、先端技術を活用した農林水産研究高度化事業(以下、高度化事業と略)の拡充について説明があった。
全内漁連からは、河川環境対策、外来種問題、カワウ対策、アユ冷水病及びコイヘルペス病(以下、KHV病)対策、漁業共済の導入について説明があった。
水研センターからは、さけますセンターとの統合、及び水産研究の将来展望について説明があった。
2.平成17年度推進会議のフォローアップに関する報告
昨年度の協議事項に関するフォローアップとして、「カワウ」や「シジミ」等をめぐる研究ニーズへの対応ぶりについて報告があった。また、有志の公立試験研究機関と中央水産研究所(以下、中央水研と略)による競争的外部資金獲得のための検討状況や、研究課題情報のウェブ上での公開について説明があった。後者のウェブ上での情報公開については各ブロックに持ち帰って引き続き検討することになった。
3.各機関からの情勢報告(2)
全国内水面場長会5ブロック代表道県、全国内水面水産試験場長会、全国湖沼河川養殖研究会、養殖研究所、さけますセンター、中央水研内水面研究部より情勢報告があった。
東北北海道ブロックからは、北海道での養鱒業の低迷、青森県での小川原湖シジミ資源の回復、岩手県でのギンザケ養殖の復調、宮城県と山形県でのアユ漁業の状況、福島県でのKHV病発生状況について等の報告があった。
関東・甲信越ブロックからは、組織の見直しと定数削減、外部資金獲得のための学会発表・論文蓄積の重要性について報告があった。また地域特産魚振興の成功例として長野県の「信州サーモン」、埼玉県の「休耕田を利用したホンモロコ養殖」に関する報告があった。
東海北陸ブロックからは、岐阜県でのサツキマス・シラスウナギの状況の悪化等について報告された。また水産庁委託事業に関して、複数年にわたる契約の制度化要望が出された。
近畿中国四国ブロックからは、各県のアユの減少傾向、宍道湖シジミの動向等について報告があった。
九州ブロックからは、アユ・シラスウナギ・KHV病について報告があった。また各県が、ドジョウ(大分県)・テナガエビ(熊本県)・チョウザメ(宮崎県)・モクズガニ(鹿児島県)・ハヤ(福岡県)と地元のニーズに合わせた特徴ある研究に力を入れていることが紹介された。一方で、組織の見直しで内水面研究機関の独立性が低下したとの感想が示された。
全国内水面水産試験場長会からは、全国共通の問題点として外来魚による被害・カワウによる被害・アユ冷水病・KHV病・魚病一般・養殖用飼餌料価格高騰が挙げられ説明があった。また、国等への要望事項候補として外来魚駆除技術開発と養殖魚の輸入に係る防疫体制の強化が挙げられた。
全国湖沼河川養殖研究会からは会長担当県の滋賀県から、組織運営体制と今年度の活動状況についての報告があった。
養殖研究所からは、組織改編による栽培技術センター、魚病診断・研修センター、札幌魚病診断・研修センターの設置、アユ冷水病ワクチン開発、KHV病対策等の内水面における魚病対策を中心に、同研究所が実施している研究や事業の概要について報告があった。また、平成18年12月に発足した水産増養殖関係研究開発推進特別部会傘下の養殖産業部会において、内水面養殖についても検討されることになるとの説明があった。
さけますセンターからは、水研センターとの統合による組織改編について説明があった。
中央水産研究所内水面研究部からは、担当研究課題の一覧が示され、その中の一般研究候補課題「水田水系」について概要紹介が行われた。質疑では水研センター理事が「水田水系」研究の狙いを事例とし、安全な農産物・水産物作りのための日本発の国際的基準作りの重要性を提起した。
4.平成18年度資源・生態系保全部会と内水面養殖部会の報告
内水面研究部長が、平成18年10月に開催した「資源・生態系保全部会」の概要について説明した。
外部予算獲得に関しては、中央水研内水面研究部が中核機関となって各県試験研究機関および大学による研究チームを編成し、各県の研究ニーズを参考に企画提案してゆく、また研究チームの編成に当たっては、研究ニーズや研究素材を提出した機関を中心とし,研究水域の妥当性,地域振興との関連および機関の研究実績(たとえば、課題担当者の学会活動や論文発表の経験や研究機関としての研究蓄積)等を考慮するとの説明があった。
アユ冷水病対策に関しては、公立試験研究機関が中心となって平成16年度から進められてきた「感染環の解明」に関する調査研究結果の取りまとめについて内水面研究部長の案が示された。案はアユ冷水病原菌を保菌していないことを放流前に確認した種苗を放流することが重要であると指摘した。
アユ増殖に関しては、水産庁の「環境調和型アユ増殖手法開発事業」の後継事業企画案である「アユ漁不振漁場の実態解明と漁場環境評価手法の確立(仮称)」の概要説明があった。内容の補強について、内水面研究部長が参加希望機関に協力を要請した。
外来魚に関しては、水産庁の「ブルーギル食害等影響調査事業」の後継事業企画案である「外来魚抑制管理技術開発事業(仮称)」の概要説明があった。研究チームの編成作業はほぼ終了しており、中央水研が代表機関として応募する旨、説明があった。
湖沼の漁場環境に関しては、公立試験研究機関から提出された研究ニーズを参考に中央水研内水面研究部が平成20年度向け外部資金プロ研企画案を2題作成準備中であるとの報告があった。
カワウ対策に関しては、公募型研究課題へ応募する機会が生じた場合は、早急に研究体制の構築を図る必要があるとの説明があった。
資源管理・資源増殖に関しては、水産庁の新規事業企画案である「内水面生態系に配慮した増殖指針作成事業(仮称)」および、水産庁の「渓流域管理体制構築事業」の後継事業企画案である「渓流資源増殖保全技術高度化事業(仮称)」の概要説明があった。前者については研究チームの編成作業はほぼ終了しており、中央水研が代表機関として応募する旨、説明があった。後者については、内容の補強について、内水面研究部長が参加希望機関に協力を要請した。
イワナ個体群の在来・非在来の判別のための遺伝子解析が内水面漁業関係者等から公立試験研究機関に依頼された場合、遺伝子抽出業務を行なって欲しい旨、内水面研究部長が公立試験研究機関長に協力を要請した。
提出された11課題の研究成果情報について検討し、2課題については採択、7課題については軽微な修正を条件に採択、2課題の採択については大規模な修正を求めることから内水面研究部長預かりとし,内水面関係研究開発推進会議に報告することになったとの報告があった。
公立試験研究機関より提出された研究ニーズへの対応方針を内水面研究部長が説明し、最後に平成18年度資源・生態系保全部会の報告が一括了承された。
5. 平成18年度内水面養殖部会の報告
内水面研究部長が、平成18年10月に開催した「内水面養殖部会」の概要を説明した。
内水面研究部より、「高品質・養殖環境研究推進に係るアンケート調査」について報告があり、内水面養殖を支える公立試験研究機関の体制、今後取り組むべき内水面養殖研究課題、養殖振興などに関する分析結果が示された。魚病分野以外の分野で養殖研の対応が必要と思われる案件や、利用加工分野で中央水研利用加工部の対応が必要と思われる案件については中央水研から担当水研に連絡して対処すると内水面研究部長が述べた。
提出された3課題の研究成果情報について検討し、全ての課題を採択し、内水面関係研究開発推進会議に報告することになったとの報告があった。
公立試験研究機関より提出された研究ニーズ(淡水魚養殖技術関係、魚病関係)への対応方針を内水面研究部長が説明し、最後に平成18年度内水面養殖部会の報告が一括了承された。
6.平成18年度研究成果情報の取りまとめ
資源・生態系保全部会で検討された研究成果情報「冬季における琵琶湖北部でのニゴロブナ当歳魚の資源状況(滋賀県)」については 、取り下げますとの報告があった。
平成18年度内水面分野の研究成果情報候補課題の13課題について、提出県または水研センターの課題担当者から研究内容の説明があった。内容等について検討した結果、山梨県の課題の分類を「研究」から「普及」に変更すること以外は、すべての候補課題が提案どおり研究成果情報として承認された。
内水面研究部長が、各機関は承認された研究成果情報を水研センターのホームページにより平成19年3月31日までに入力するよう要請した。
中央水研と栃木県水産試験場の共同研究の成果である「高水温処理による安全・簡便なヒメマス偽雄作出技術」で発明された技術を、海外のサケ輸出国からの特許攻勢から守る必要があるのではないかと水研センター理事が述べた。中央水研と栃木県が対応を検討することにした。
富山県水産試験場長から、研究成果情報の提出に際しては検討段階で混乱を招かないように、部会における都道府県からの研究成果情報に対する評価・検討に係る作業マニュアルや、部会から研究開発推進会議への推薦方法についてのガイドラインを定めて欲しいとの要望が出された。
これに対し、水研センター理事が、研究成果情報を提出する意義は世間一般や水産関係機関等に研究機関の成果を知らしめることが目的であり、そのために誤解を与える内容や表現を避ける観点で評価・検討・推薦等の手続きを行えばよいと考える。また、研究成果情報のブラッシュアップは提出機関の了承のもとで行なわれることを基本としている旨、回答した。この水研センター理事の回答に沿って、次回からの研究成果情報の取扱い方法を内水面研究部内で検討すると内水面研究部長が述べた。
7.内水面関係研究の促進・補強に関する協議
内水面研究部長が、内水面漁業漁獲統計調査の改正点について説明した。多くの研究機関から、この変更がもたらす問題点について意見が出された。これらを受けて、水研センター理事はこの案件が平成19年1月25日開催予定の地域水産試験研究振興協議会に提案し、議論すべきであると述べた。また、富山県水産試験場長は想定される影響について各県が早急に調査し地域水産試験研究振興協議会での協議事項とすべきではないかと述べた。これらの発言を受け、水産庁研究指導課担当官は出された意見を持ち帰って必要な対応を検討すると発言した。
内水面研究部長は、地域水産試験研究振興協議会での検討結果を待ちたいが待ったなしの状況でもあり、どの様な対応が可能か部内でも早急に検討したいと述べた。
8.その他
当推進会議と関連部会の運営細目等の一部修正が承認された。

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