平成17年度水産利用関係試験研究推進会議及び利用加工技術部会報告書

会議責任者中央水産研究所長
開催日時および場所日時平成17年12月7日10:00~17:30
場所水産総合研究センター中央水産研究所 講堂
出席者所属機関及び人数 行政及び関係独立行政法人10機関 11名
都道府県        45機関 46名
団体等         15機関 19名
評価委員(大学、民間)  2機関  2名
水産総合研究センター          23名
オブザーバー               4名
合計          72機関105名
結果の概要
議題結果の概要
1.平成17年度水産利用関係試験研究推進会議の運営について
一層の連携強化と効率的運営を図ることを目的として平成16年度に運営方法を見直し、①都道府県部会と企業・団体部会を合体して利用加工技術部会に改めたこと、②研究会を都道府県・団体・大学・企業等へ開かれた場に改善したこと、③補完機能として幹事会を強化したこと等、水産利用関係試験研究推進会議の運営方針について説明した。
2.農林水産省等からの関連事業の説明
農林水産省の総合食料局食品産業企画課技術室より、食品産業における技術開発支援に関する予算動向及び食品機能性評価支援センターの設立等の説明があった。
消費安全局消費安全政策課より食品トレーサビリティーの国内外の取り組みについての説明があった。
農林水産消費技術センターより、同センターの業務概要および技術開発の説明があった。
富山県より、競争的食品関連研究・事業に対して都道府県研究機関の役割と立場を考えて参画し易い体制を整えてほしい旨要望があった。
3.水産庁からの関連事業の説明
水産庁増殖推進部研究指導課より、水産庁関連では平成18年度予算要求状況、大型クラゲ対策、アサリ資源全国協議会、地域水産加工技術セミナーについての報告、農林水産技術会議関連では第3期基本計画、技術会議関連プロジェクト研究についての平成18年度予算格付けの報告、並びに海洋技術室より平成18年度開始の水産バイオマスの事業の概要の説明があった。
(社)海洋水産システム協会より、漁業現場も国の方針に従うよう努力しているが、これら現場がリンクできるような「事業」の企画を水産庁に希望する意見があった。
4.中央水産研究所の情勢報告
競争的資金関連研究の状況として、関連資金(運営費関連資金)に関する制度、共同研究、一般研究、所内プロジェクト研究の状況及び各部(利用加工部以外)の研究に関連する情勢報告を行った。
利用加工部関係の担当課題の予算額、研究傾向、地域水産加工技術セミナーの開催、日本・ノルウェー科学技術協力協定に基づく「水産食品の安全・安心に関する円卓会議」の開催等について説明した。
5.関連団体から重点
全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会より、機能性に関する事業の成果についての説明があった。
海洋水産システム協会より、「ユビキタス食の安全・安心システムの確立」及び「ブランド・ニッポン漁獲物生産システム開発事業」関連の事業についての説明があった。
(財)日本食品分析センターより、センターの各種委託事業の説明があった。
6.平成16年度水産利用関係試験研究推進会議のフォローアップ
平成16年度推進会議の重点検討事項に関する経過として、以下の事項について一定の前進があったことを説明した。
「トレーサビリティーシステム」については、平成17年度の消費安全局「ユビキタス食の安全・安心システムの確立」事業で(社)海洋水産システム協会・(社)大日本水産会が主体となり水産総合研究センターが協力し、予算を獲得した。
「未利用水産資源」については、カタクチイワシ高度化利用関連で都道府県も参加した所内交付金プロジェクト研究を獲得し、18年度以降の交付金プロジェクト研究及び外部資金の獲得を目標に活動中である。
「バイオマス」については、継続中の水産庁事業を見直し、「海藻バイオマスのカスケード利用」を中心テーマに事業の拡充に向けて水産庁と協力して努力中である。
16年度より変更した推進会議の運営については、多数の構成機関の参加のもとで議論を活発にし、実効性を上げるために17年度は会議進行の改善と幹事会の充実を図ったことを説明した。
7.都道府県研究機関、水研センターの課題構成と研究ニーズへの対応
都道府県の研究課題は、新製品開発・鮮度保持・未低利用資源の利用技術開発等、地域密着型が中心であり、水研センターでは、水産物の機能性評価、海洋資源から新規素材開発、原料原産地判別等のリスクの高い基盤的研究課題が中心であり、それぞれ分担と連携が明確になっていることを説明した。
都道府県の研究ニーズに対して、「食中毒・貝毒研究」、「原料原産地判別技術」、「カタクチイワシ高度利用研究」、「水産物重金属」等の要望については、利用加工部で研究実施中であり、研究の進捗に応じて、情報提供、研修、共同研究等の対応が可能であると説明した。
青森県より、輸出振興に関連した課題について場長会に要望する予定であることに関連して、採択への要請及び水産総合研究センター中長期計画の中で課題化の要望があった。
8.重要検討事項「水産利用加工試験研究の中長期展望」について
①都道府県研究機関と民間企業の連携の現状(各ブロック幹事)
企画調整課長が、水産総合研究センターの共同研究実施規程について説明した。引き続き、北海道ブロック、東北ブロック、中央ブロック、近畿・中国・四国ブロック、日本海ブロック、九州ブロックの幹事から、資料に基づき、連携・協力の現状について説明があった。
②公設試験研究機関と民間企業との連携の事例について(講演者:長崎県総合水産試験場水産加工指導センター加工科長岡本昭)
先進例として、長崎県における水産加工業の現状、指導センターの民間との連携実績、アンケート調査から見たオープンラボ利用の実態、等についての講演が行われた。
広島県から、利用者の「権利」が守れるようなシステム作りが必要であるとの提言があった。
熊本県からのオープンラボの利用法に関する「業者が問題なく自主的に利用出来るようにするには?」との質問に対して、「トレーニングが必要で指導をきちんとやること」との回答があった。
千葉県からの「土日、時間外の対応」についての質問に対して、「申込者の経験に応じて職員の対応を決定する」との回答があった。
日本水産(株)からの「どの程度の労力が民間指導に使われるのか」の質問に対して、「予算的規模では1/7程度であるが、マンパワー的には相当の労力を割いている」との回答があった。
「知的財産」や「秘密保持」についての考え方について、広島県では、課題の申し込みがあれば、他にも同一の課題での要望がないか公募して、あれば共同で研究を実施させるとの説明があった。また、宮城県では、試験場が指導して行った研究は原則「公開」であるが、企業主体で行った実験は非公開としているとの説明があった。
(社)海洋水産システム協会から、漁協や漁連との連携強化のため、推進役として公設試験研究機関の役割が必要であるとの意見があった。
鳥取県から、成果の出し方等が難しい。共同研究制度はあるが、共同研究費なしで、企業の人材育成として実施している。
技術士会から、企業のコンサルタントとして「秘密保持」を前提とした公的試験研究機関との連携の制度構築の要望があった。
最後に、税金を使いながら民間企業の活力を損なわないように活力を引き出すために、「公開・公平・公表の原則」と「個々の企業の知財・ノウハウの保護」を如何に折り合いを付けてゆくか、中長期的な展望に立ってこれからも推進会議で機会をみて検討することを確認した。
③水産物の輸出振興について(講演者:農林水産省大臣官房国際部貿易関税課輸出促進和泉真理室長)
農林水産物等の輸出品目別内訳、地域農林水産物輸出取り組み事例、輸出拡大目標、輸出に向けた総合的支援策、農林水産物等輸出促進全国協議会の設立、輸出倍増に向けた取り組みの強化についての講演が行われた。
滋賀県からの「海外の消費者にアピールするポイントは何か」との質問に、講演者から「欧米は健康・ファッショナブル・こだわり」で、「中国はおいしい・高級」との回答があった。
宮城県からの「生鮮品と加工品ではどちらが伸びそうか」との質問に、「従来輸出物の主体は加工品であり、生鮮品は近年輸出され始めたばかりなので、今後の伸びは生鮮品が期待できる。」との回答があった。
技術士会からの「輸出に関してJETROとの関係は?」との質問に対して、「JETROとは連携の関係にある。現在はマグロ、カツオが主要水産輸出品目であるが、各種輸出品目を増やす努力をする必要がある」との回答があった。
福井県からの「地産消費との整合性、漁獲量が減っている中での輸出振興をどう考えるか?」との質問に、「販路の1つとして輸出を考え、輸出は地産消費と並行して考えなければならない。また、漁獲量の問題としてもやはり、魚価を上げるための販路の一つとして輸出を考えている。」との回答があった。
利用加工部長からの「輸出促進のための研究・技術要素は何か?」との質問に対して、「輸出のネックは『価格』であるので、対策として鮮度保持や流通技術の開発が研究要素になる。」との回答があった。
④輸出に関する情勢報告
水産庁加工流通課から、輸出促進に関して、HACCP等の衛生基準への対応等に関する情勢報告があった。
千葉県からの「ヒスタミン等の基準に問題はないか?、ヒスタミンが生成しない加工法のマニュアル作り等の対策を要望する。」の要望に対して、「ヒスタミンはWTOのSPS協定で決められている。」との回答があった。関連して、「SPSは変更できないか?」との質問に対して「国際交渉の場で取引材料となることもあり、総合的な利益で決めなければならない事項である。」との回答があった。
大日本水産会から「EUのヒスタミン基準は国際的に妥当と言わざるを得ない。日本の水産物のヒスタミン含量が低いということをいかに説明できるかが重要であり、そのためには多くのバックデータが必要である。」との補足意見があった。
9.水産総合研究センター利用加工研究の中長期展望
利用加工研究の中長期展望(案)として、①水産加工業の役割と問題点に基づく研究推進、②地域の試験研究機関及び関連団体との役割分担を踏まえた研究推進、③水産流通技術が食糧供給に果たした役割を向上するための研究推進、④安全・安心・高品質を求める社会の要請を実現するための研究推進、⑤新しい漁業及び新しい水産加工産業を開拓する研究推進、の5本柱について説明した。
マリノフォーラム21より、利用から見た漁獲方法の改善、養殖魚設計等の「川下から川上へ上ろう」との研究展望は評価するとの意見があった。
青森県からの「輸出振興について中央水産研究所はどのように取り組むのか」との質問に対して、「輸出振興を重点課題の文言に入れていないが、重点課題の多くは輸出振興の支援研究の位置付けである。」と回答した。関連して、加工流通課から「三位一体政策もあるので交付金を活かして県で取り組むことも可能である」との補足説明があった。
全水加工連より「輸入は多いが次第に海外資源の入手が困難になってきている。日本の水産資源回復、未利用資源の利用法の開発が今こそ必要である。中国等に対抗するためには省力化等に集中的に取り組む必要があろう」との意見があった。
技術士会より「海外の漁船で使用される冷却海水がなぜ日本で普及しないのか、モデル船等を設定した研究を是非ともお願いしたい」との要望があった。
最後に利用加工部長が「今回の論議を検討させていただき、要望に沿ったより良い内容の中長期展望を作成したい。」と取りまとめた。
10.研究成果情報課題の検討
研究成果情報課題13課題の内容と修正の進捗状況を説明し、検討した。その結果、候補課題13課題については、修正を加えた後、本年度の研究成果情報とすることが了承された。
11.利用加工と経済分野との連携(水産経済部長)
水産経済部長が、利用加工研究と水産経済分野の連携に関して、「カタクチイワシ資源の高度利用による地域活性化計画」、「マリノフォーラムとの連携に関して」、「次期中期計画における経済的側面からの水産物トレーサビリティの構築」の3事例について紹介し、今後も利用加工研究と水産経済分野の連携が必要であることを説明した。併せて、水産経済研究分野への研究ニーズに対応するための「水産経済研究連絡会」の設立について説明した。
12.その他
本推進会議に引き続き行われる部会傘下の研究会と研究会後の研究相談会の予定について説明した。
平成13年度の本推進会議における発意で始まった全国水産加工品総覧の出版計画について、都道府県試験研究者等の広範囲な関係者の協力により平成16年7月に同総覧が刊行されたことを報告した。

nrifs-info@ml.affrc.go.jp

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