平成16年度水産利用関係試験研究推進会議
「利用加工技術部会」報告書

会議責任者中央水産研究所長
1.開催日時平成16年12月23日(木)16時30分から18時まで
2.開催場所中央水産研究所 講堂
出席者所属機関及び人数73機関144名
4.結果の概要
議題結果の概要
1.重点課題に関する協議
(1)トレサビリティーについて
①EU等における水産物トレサビリティーの取り組みについて

②発表者:丹羽弘吉(駐日ノルウェー大使館顧問、(有)バーテックス代表取締役)

③講演要約:EU(25カ国4億人)は水産物にも安全性を確認する水産物履歴追跡システム(TraceFish)をノルウェーが策定した方式を2005年1月1日より導入することをきめた。これ以降はEU域内を流通する水産物はこの基準に準拠しなければならない。EUは2007年には法制化を目指している。トレースされる項目(例)は、養殖場の場所、生簀番号、稚魚納入業者、餌の成分、餌の納入業者、使用ワクチン、最終給餌日、水揚げ時期等。このシステムを国際標準とすることを目論んでおり、日本が輸出振興を図る上でクリアーすべき問題となる。

④質疑:EUは2005年に導入を開始、アメリカは2年遅れで導入を予定しているが、日本は全く予定が見えない(利用加工部長)。EU25カ国が統一した基準を持つことは、日本が輸出をする場合には好都合である(研究課長補佐)。EUでは小規模漁船には適用させるのかとの質問(研究指導課長補佐)に対して、丹羽氏は摘要されないとの回答であった。トレサビリティーについて水産海洋システム協会など関係機関と連携して課題化に取り組むことが確認された。

(2)未低利用資源利用について
①カタクチイワシ、サンマ等未低利用資源の利用技術開発研究の推進について

②発表者:田辺伸(千葉県水産研究センター、生産技術部流通加工研究室長)

③講演要約:多獲性魚の水揚げは、マイワシ、マサバ、マアジが減少する中でサンマ以外ではカタクチイワシのみが安定的に生産され、平成16年は主要32港の水揚げの第1位で29万トンであった。千葉県では14万トンが水揚げされた。しかし、平均単価は21円/kg以下であり巻き網漁業経営が危機的状況となっている。カタクチワシの用途は煮干し、丸干し、みりん干し等に利用されるが、他の7割は養魚用餌などに向けられ魚価低迷の原因となっている。食用向けの用途が小さい原因として、魚体の軟化が速い、小さく処理に手間がかかる、生食用としても寄生虫の問題がある。これらの問題を解決し、付加価値を向上するために、是非課題化して関係機関が連携して取りくむことを要請する。

④質疑:小さく手間がかかる魚種であるから、魚体処理機械の開発が重要である(富山県)。この問題は、千葉県以外に茨城県、宮城県も研究ニーズとして上げており、関係機関で勉強会を立ち上げ、課題化に向けて努力することが確認された。

(3)バイオマスについて
①農林水産バイオマス研究の現状と課題

②発表者:桑原隆治(水産総合研究センター中央水産研究所利用加工部主任研究官)

③講演要約:バイオマスとは化石資源を除いた生物由来の有機資源のことであり、焼却しても大気中に二酸化炭素を増加させない、また枯渇しない資源であり、地球温暖化防止、循環型社会の形成、農林水産業の活性化のために期待されている。水産分野ではこの取り組みが遅れているが、海藻資源を中心に機能成分や工業素材の開発、そしてメタン発酵などエネルギー開発等総合的な利用技術の研究が必要とされている。

④質疑:千葉県ではドイツの機械を導入して乾式メタン発酵を開始しているなどの情報提供(技術士会)があった。バイオマス関連研究については、マリノフォーラム21等関係機関と連携して、エネルギー開発研究も視野に入れた総合的な課題検討を進めることが確認された。

(4)重点課題協議のまとめ
協議された3つの重点課題について、それぞれ研究ニーズとして提案のあった関係機関等と連携を図り、行政部局とも協議して課題化に取り組むことが確認された。
2.研究会の活動報告
 部会傘下の研究会は「品質安全研究会」と「資源利用研究会」で構成され12月14、15日に開催された。都道府県研究機関45機関80名、団体7機関10名、企業7機関9名、大学9機関16名、水産総合研究センター26名、合計68機関、141名の参加があった。
 発表課題は57解題あり、活発な議論が行われた。

nrifs-info@ml.affrc.go.jp

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