ASEAN-SEAFDEC主催の国際会議(ASEAN-SEAFDEC
Regional Technical Consultation on Right-based Fisheries and Co-management
for Small Scale Fisheries)に参加して
7月18-20日にインドネシアのジャカルタで開催されたASEAN-SEAFDEC主催の国際会議(ASEAN-SEAFDEC
Regional Technical Consultation on Right-based Fisheries and Co-management
for Small Scale Fisheries)に参加しました。
この会議は、ASEANにおける膨大な数の零細漁業者を組織するために、日本の漁業権・漁業協同組合のシステムを参考にしようという目的で開催されたものです。会議の最終日にはASEAN加盟8カ国における漁業政策をコマネジメント制度(後述)に変換していくためのガイドラインが採択されています。
現時点で国際的に主流を占めている漁業管理理論は、TAC(Total Allowable Catch)方式あるいはそこに市場原理を導入したITQ(Individual
Transferable Quota)方式です。しかし、近年になってこの方式の限界が明らかになってきました。その限界とは、特に制度としての効率性の面で、政府側に非常にコストがかかるということです。このような問題認識から、国際機関では漁業管理方策としてのコマネジメントに注目し始めています。
コマネジメント(Co-management)とは、中央および地方政府と漁業者団体などの地方コミュニティーが、漁業管理や資源利用に関する意思決定権限を分かち合う制度のことを指しています。今回のASEAN-SEAFDEC会議にも、世界銀行や、The
Swedish International Development Cooperation Agency (Sida)、World Fish
Center、メコン川委員会(MRC)といった国際機関が参加しており、世界的な関心の高さを伺うことができました。また、この会議に続いて、8月9-13日には、コマネジメントに関するFAO主催のワークショップがカンボジアで開催されます。
日本は長年にわたって、コマネジメントが機能してきた数少ない国の一つとして注目されています。しかしながら、漁業先進国たる日本に求められている国際的責務は、欧米型の漁業管理と日本の漁業管理の良いところを組み合わせて、新たな漁業管理制度(及びその理論)を構築することです。近年になってわが国に導入されたTAC・TAE制度や資源回復計画は、このような観点からも非常に大きな意義をもつ試みといえます。日本の新しい試みが今後どのような機能していくのか、日本制度の弱点(産業としての競争力や持続性など)をどのように補強できるのかについて、さらなる研究と検証が必要とされています。