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50thICoMST
(第50回食肉の科学技術に関する国際会議)に参加して |
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50thICoMST(第50回食肉の科学技術に関する国際会議)に参加して
私は現在、(独)日本学術振興会(JSPS)外国人特別研究員事業により、(独)水産総合研究センター・中央水産研究所・利用加工部品質管理研究室にて研究活動をしており、岡崎恵美子博士の指導のもと、食品の品質評価に関する分野において重要かつチャレンジ性に富んだ研究に取り組む機会に恵まれています。当研究所における私の研究内容は「近赤外(Near-infrared
spectroscopy-NIRS)分析による非破壊評価技術の開発」です。
食品を加工する際の加熱処理は、病原体、毒素、その他有害な微生物から食品を守るという理由から、5000年以上前から行われてきました。ですから加工食品は一般的に安全ですが、生肉、魚介類、生卵となると至るところにバクテリアが存在します。そこで、食品を衛生的に取り扱わないと有害なバクテリアが危険なレベルにまで増殖し、人間の体に害を及ぼす可能性があります。食肉加工における適正過熱の評価(最終到達加熱-EPT)の方法については、いくつかの報告が行われていますが、水産加工の分野では、魚介類が人間にとって今後ますます大切な食物源となるにもかかわらず、適正加熱について注目すべき報告がないのが現状です。特に、魚介類の中でもすり身製品は、高タンパク低脂肪で加工がしやすいという点から近年注目されており、このような付加価値の高い水産食品についても、加熱処理する際の最適温度を見つけることは、とても重要だと思いますが、今のところ、魚肉製品加工におけるEPTの測定法についての報告もありません。そこで、現在私たちは魚肉製品の一つであるかまぼこ用すり身のEPTを、近赤外(NIRS)を使用して評価する方法の確立を試みています。私たちはこの研究を始めるにあたり1)魚と凍結・解凍魚の判別、2)魚肉製品の適正過熱の評価、の2点をテーマとし、現在もこれを軸に研究活動を行っています。
さて、今年の8/8から8/13にかけてフィンランドのヘルシンキ大学で50th
International Congress of Meat Science and Technology(50thICoMST-第50回食肉の科学技術に関する国際会議)が開催されました。会議は、1.生化学・生物学 2.食肉の品質評価 3.微生物学と安全性 4.食肉加工技術 5.栄養と健康から見た食肉 6.食肉科学における重要課題、の6つのセッションに分かれて行われ、発表総数は300余りでした。NRIFSからは私がセッション4で、食品バイオテクノロジー研究室の石田典子主任研究官がセッション1で発表しました。水産および食品関係の参加機関は水産総合研究センターの他にDanish
Institute for Fisheries Research(デンマーク)、Institute of Fishery technology
and Fish Quality(独・ハンブルグ)、Swedish Institute for Food Research(スウェーデン)、Matforsk
Norwegian Food Research Institute(ノルウェー)等、各国を代表する食品、水産関係の試験研究機関でした。
開催国フィンランドは北欧のとても美しい国で、バルト海、ボスニア湾、フィンランド湾に囲まれ、スウェーデンとロシアの間に位置します。総面積338,145km2に対して人口は5,214,512人と少なめで(2004,7月現在)、首都はヘルシンキ、工業を基幹とする自由主義経済国です。
50thICoMSTでの私の発表テーマは、品質管理研究室が現在取り組んでいる品質評価技術開発の一報として行った“Visible-NIR
spectroscopy: a non-destructive rapid technique to assess end-point temperature
of kamaboko gel(「近赤外分析(NIRS)によるかまぼこゲルの最終到達温度の測定」 ”でした。この研究発表に対しMelvin
C Hubt教授(カンザス州立大学)、Chris Calkins教授(ネブラスカ大学)、Louw Hoffman教授(南アフリカ)、Gauri
Mittal教授(グエルフの大学)、A S Babji教授(マレーシア)、Claudia R Perez博士(スペイン)、Guenter Klein教授(ドイツ)など、環境にやさしい技術である非破壊分析装置に対し強く関心を持った参加者から、近赤外分析についてさらに詳細な情報提供を希望する声があがりました。そこで、食品産業における近赤外分析のより最新の応用技術などについて長時間議論する場を持ちました。
ところでフィンランドのAtria社は世界を代表する食肉加工会社の一つですが、今回の会議プログラムの一つにAtria社の食肉加工場見学がありました。Atria社のスタッフの随行でヘルシンキから列車で4時間、食肉加工場に到着後全工程について簡単な案内を受けながら見学することができました。世界のトップレベルの食肉加工場を見学するのは初めてのことでしたが、特に私は品質評価工程ラインに設置された、食肉の加工前と加工後の品質を近赤外分析(NIRS)を使用して評価する非破壊評価装置にとても興味を覚えました。
今回50thICoMST
に参加できたことは非常によい経験になりました。水産総合研究センターそして岡崎恵美子博士に心から感謝いたします。
(訳文:馬橋美紀) |
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