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2. 資料と方法 九州南方海域において蒼鷹丸により実施した計6回(2000年6月、2001年3月、2001年6月、2002年3月、2002年6月、2003年3月)の測点間隔約15kmで実施したLADCP(Lowered Acoustic Doppler Current Profiler)/CTDグリッド観測より得られた流速・水温・塩分データを解析した。その際、調査海域のすぐ南に位置する中之島の潮位変動において卓越する20~30日周期変動に着目し、6回の観測結果をこの20~30日周期変動の位相との対応で順に並べ、その変化について調べた。 |
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3. 中之島潮位変動と6回の観測の対応 図1は6回のLADCP観測で得られた九州南方海域における50m深流速分布である。図中に中之島の位置を示したが、いずれの観測においても中之島が黒潮北縁域に位置していた。図2に2000年から2003年の期間の中之島の潮位変動と6回の観測の対応関係を示した。中之島潮位は期間を通して20~30日周期の変動が卓越していた。6回の観測をこの中之島潮位の20~30日周期変動の位相との対応を調べると、6回の観測データは各位相に分散しており、2001年3月→2003年3月→2002年6月の順で中之島潮位の上昇、2001年6月→2002年3月→2002年6月の順で中之島潮位の下降の各位相に対応していた(図3)。 |
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4. 九州南方海域の20~30日周期変動 6回の観測結果は実際には一連の時系列データでないが、中之島潮位変動に見られた20~30日周期変動が今回の観測海域全体において卓越した時間変動でありそれらが相互に関連しているという仮定の基に、これら6回の観測データを上記の順に並べ(図4)、観測海域全体の流速・密度場の変化について解析した。 最初に、中之島潮位の20~30日周期変動のメカニズムについて調べるために、6回の観測の主水温躍層中の等密度面(σt=25.2)の深度分布を上記の順に並べその変化について調べた(図4(a))。その結果、中之島潮位に卓越する20~30日周期変動は黒潮前線波動の伝播によるものであることが示唆された。上層が厚い(躍層深度が大きい)部分の通過時に中之島潮位は高くなっていた。 図4(c)には6回の観測の50m深流速分布を上記の順に並べて示した。前述した前線波動の躍層が深くなった部分は黒潮北縁部の流速分布で蛇行の峰と対応していた。これが黒潮下流方向へ伝搬していることが示唆された。また、この並びの中で、黒潮前線渦と大隅海峡の流れに特徴的な変化が見られた。中之島潮位の上昇時(2001年3月と2003年3月)に高気圧性渦、下降時(2001年6月と2002年3月)に低気圧性渦が黒潮前線域に形成されていた。前者は黒潮北縁部の蛇行の峰の北方で、後者は蛇行の峰の上流側の谷で形成されていた。さらに、低気圧性渦の発達に伴い大隅海峡に100cm/sec以上の強い東向流が形成され、逆に、高気圧性渦の形成時には大隅海峡の東向流が弱まっていたことが示唆された。 図4(b)、(c)、(d)にそれぞれ6回の観測の200m深水温分布、50m深水温分布およびそれぞれの観測期間中または直前に得られたNOAA衛星熱赤外SST画像を上記の順に並べて示した。50m深流速場において見られた高気圧性渦と低気圧性渦の形成がそれぞれ高温域、低温域として200m深水温分布において認識できた。また、50m深水温分布やSST画像においては、低気圧性渦の形成に伴う黒潮系暖水の沿岸域への波及現象(暖水舌の形成)が確認できた。低気圧性渦、暖水舌および大隅海峡の流れの3つが、組織的なひとつの海洋構造であることが考えられる(図5)。 |
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5. おわりに 今回解析に使用したLADCP/CTD観測データは、海面から海底まで1m 間隔での流速・水温・塩分データセットであり、流速・密度場の変動についてさらに詳細な3次元的な構造の解析が可能である。今後、今回明らかになった九州南方海域における流速・密度場の変動について、黒潮前線域における海水交換との関係をさらに詳細に調べ、そのメカニズムについて検討するつもりである。 |
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