中央水研ニュースNo.33(2004...平成16年3月発行)掲載 | ||||
【研究調整】 太平洋イワシ,アジ,サバ等長期漁海況予報会議について
入江隆彦
平成15年7月16日~17日,北海道から鹿児島県の太平洋側の各都道府県の水産試験研究機関はじめ,水産庁,気象庁,海洋水産資源開発センター,漁業情報サービスセンター,独立行政法人水産総合研究センターの研究機関など35機関計88名の出席の下に,平成15年度第1回太平洋イワシ,アジ,サバ等長期漁海況予報会議が開催されました。 この会議は,平成10年10月の水産庁研究所組織改正による中央ブロックの担当範囲の拡大(千葉県~鹿児島県)に伴い,それまで別々に開催していた「太平洋北部イワシ,サバ長期漁海況予報会議」(旧中央水研・横浜担当)と「太平洋南部及び九州南部カタクチイワシ,マイワシ,モジャコ,アジ,サバ長期漁海況予報会議」(旧南西水研・高知担当)の2つの会議を,11年度から一本化して開催するようになったものです。当初,7月(7月~12月の予測,高知開催)と12月(1月~6月の予測,横浜開催)の年2回の会議開催を予定していましたが,シラスについては12月には産卵に関する情報がないため予報が困難であるとの意見があり,翌年3月に情報を収集してFAX会議で予報を行うことになりました。実際には,11年度から海況,マサバ及びゴマサバ,マイワシ,カタクチイワシ(シラスを含む)について,3月にFAX・メール等で情報交換し,改めて4月~6月の予報を行いました。12年度からは7月,12月,3月(FAX・メール会議)の年3回の予報会議が定着し,現在に至っています。なお,平成13年4月の水産庁研究所の独立行政法人化以後,当会議の予算の枠組みが変わり,水産庁が独立行政法人水産総合研究センターに一括して委託した「我が国周辺水域資源調査等推進対策事業」の内の「沿岸沖合漁業漁況海況予報事業」として,運用・実施されております。 会議に先立つ2~3週間前から,水研・水試の担当者間で頻繁な情報交換が行われ,予報原案の検討がなされます。会議第1日目は,冒頭の全体会議で海況,魚種別の予報原案が水研担当者から提案され質疑を行った後,「海況」,「さば類,マアジ」,「いわし類」の3つの分科会に分かれて,各機関から調査結果に基づく最新情報の提供・説明と意見交換及び予報案の細部検討が行われます。2日目は各分科会ごとの論議の続きが行われ,最後に再度全体会議で各分科会別に予報案の検討結果が報告され,質疑の後に予報案の採択が行われます。最初に全体会議を行う理由の1つには,各魚種の予報案の検討に際し,海況予報を十分考慮してほしいとの意味合いが含まれています。北海道から鹿児島県までの太平洋側の各都道府県の水産試験研究機関担当者が一堂に会するこのように大規模な予報会議は他にはありません。当初は会議担当が黒潮研究部に替わり,会議参画都県・機関が増え,対象海域が拡大したことに対する違和感が見られましたが,これも回を重ねる毎に少なくなって来ているように思われます。マイワシ,マサバ等の回遊性浮魚類の漁況予報を行う場合に,もう少し狭い海域(例えば小ブロック)別に行うのがよいか,それとも資源評価単位である系群の分布範囲全体を対象にして行う方がよいのか,意見が分かれるところです。また,会議の前日に中央ブロック資源評価会議と中央ブロック卵稚仔プランクトン調査研究担当者協議会を開催して,漁況予報の基礎である資源状態に関する諸情報が担当者の共通の理解となるように改善して来ましたが,このことは会議運営の効率化に一定の効果を上げているように思われます。
今回の会議で注目されたのは,マサバでは0歳魚(2003年級群)の来遊量が全体として前年を下回る一方,1歳魚(2002年級群)の来遊量が前年を大幅に上回ると予測され,資源を増加させるためには今漁期に2002年級群を保護し親魚量を増加させることが必要だということです。また,マイワシに関しては依然として資源の減少傾向が続く中で,2003年級群が冬春季にマイワシシラスとして土佐湾や紀伊水道外域に比較的多く出現し,これが春期以降に当歳魚として豊後水道等でまき網によって比較的多く漁獲されたことです。カタクチイワシに関しては,漁場が形成される沿岸以外に黒潮親潮移行域からさらに沖合まで魚群が分布していることが明らかになっており,昨年9月~10月に道東海域でまき網により3万トン漁獲されたこともあり,今年の予測が注目されるところでしたが,調査結果から沖合域における資源水準は昨年を下回るものと推定されました。
(生物生態部長(海洋生産部長事務取扱),前黒潮研究部長)
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Takahiko Irie |