中央水研ニュースNo.32(2003...平成15年7月発行)掲載 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
【研究調整】
谷津明彦
かつて年間400万トン以上が漁獲された我が国周辺のマイワシ資源は,1990年ごろから急速に資源が減少し,近年では漁獲量が10万トン以下にまで落ち込んでいます.そのため,新聞やテレビなどでは「高級魚になったマイワシ」というキャッチフレーズで報道されています.実際,北米産のマイワシも輸入されています。 マイワシは他の重要魚種とともに1997年から許容漁獲量(TAC)制度の対象となっていますので,このような漁獲量の大変化をもたらした原因の解明が求められています.特に,資源変動に及ぼす漁獲と海洋環境の影響について,現段階における科学的知見を行政や漁業関係者はもとより広く国民に説明する必要性が高まってきました。 そこで,水産総合研究センターでは本部の研究開発官と中央水産研究所が協力して表記検討会を2003年2月5日と6日に開催しました.出席者は大学,公立試験研究機関,水産総合研究センターの研究者および水産庁関係者の約80名でした.議事次第は下記のとおりです。 結論の図は本誌の表紙に掲載しました.また,成果は水産庁によりパンフレットとして印刷する一方,水産総合研究センターのホームページ(http://abchan.job.affrc.jp/)に掲載してあります。この検討会を支えたのは,平成元年から10年間行われた農林水産技術会議のプロジェクト研究「農林水産系生態秩序の解明と最適制御に関する総合研究」(通称バイコス)でした。バイコス終了後も精力的に研究が継続され,マイワシをはじめとする水産資源の変動の実態とメカニズムが明らかにされつつあります.このような研究成果が無くとも適切な水産資源管理が行えますが,資源変動のメカニズムを知ることは,関係者の資源管理に対する理解を深め,将来的には変動予測も可能となると思われます。 (生物生態部 資源管理研究室長)
Akihiko Yatsu |