中央水研ニュースNo.32(2003...平成15年7月発行)掲載

【研究調整】
平成14年度内水面関係試験研究推進会議について
白石 學

 標記の会議は,平成15年2月27日(木)午前10時30分から午後5時10分まで,上田市のホテル祥園において開催され,15機関,18名が参加した。
 まず,当研究所長から,「生産者から消費者への食料政策の方向性への軸足の移動」,「本会議は内水面研究の戦略会議であり,活発な論議を期待する」との主催者の挨拶後,水産庁増殖推進部長(代理研究指導課長)から,「どこに行っても内水面は『外来魚,アユの冷水病,カワウ』の三題噺が共通で,政界での関心が高まっている」等との挨拶があった。
 報告事項として,各県から,内水面における水産業,及び水産研究をめぐる情勢について報告があり,多くの県から,「外来魚,アユの冷水病,カワウ問題」の所謂三題噺題が多く報告された。その中で,「外来魚対策として漁業者から外来魚の買い上げの実施」「冷水病への具体的な対応」等について,また,シジミやアユ等の内水面水産業での活性化事例,食の安全・安心とブランド化等の立場からHACCPの導入やトレーサビリティ等のソフト開発の重要性について報告された。さらに,県等において試験研究機関を統合し,水産研究機関をその一機関(分野)とすること,及び内水面試験研究機関の縮小,試験研究機関の評価の一つとして企業診断方式が取り入れられること等の試験研究を巡る厳しい状況も報告された。
 協議事項において,(1)「水産研究・技術開発戦略」の達成状況に関して,構成機関から提出された研究課題を「戦略」に即して分類・整理し,課題毎の進捗状況のコメントを付した資料が事務局より提出され,今回は,新方式のために実施課題が漏れている可能性があり,事務局より各機関に問い合わせ,より充実したものとすることで了承された。(2)「推進会議の部会について」は,昨年度「地域部会」の設立が了承されながら殆ど機能しなかったこと,地域間でニーズが非常に異なり共通の論議が困難等を踏まえ,事務局として,内水面の産業実態を踏まえ問題を解決すべき手だてと具体的な対応をするため,内水面推進会議「地域部会」を廃止し,新たに「資源・生態系保全部会(仮称)」「養殖部会」の設置,及びより具体的な事項に対応するために研究会やワーキングループの設置を提案した。これについて,「推進会議,部会の構成者は誰か」,「水産庁や水研センターへの要望事項に関するルートは」等の質疑応答があり,中央水研から,「地域別部会では地域独特の問題になりがちで,研究分野での部会にすることにより本質的かつ重要な問題に取り組みやすいし,部会も機能しやすい」「部会・ワーキンググループで論議し,問題の整理・課題化をして提案し,予算を求めることにしたい」等の答弁を行った。協議の結果,方針については了承された。本会議で出された「農業基盤整備事業等による河川改修等について,水産サイドからも河川の生態系の多様性を確保する観点から,何らかの取り組みをすべきでなないか」との提案については,現在までの国土交通省,及び農林水産省等の取り組みの現状等の説明があり,今後,部会等で協議をすることとなった。
 また,内水面推進会議の運営細目の(構成者)第4の(2)についての見直し,「及び都道府県の内水面機関」の規定を除くこと,及び,構成者として参加をお願いする中央水産研究所長が必要と認める機関・団体を早期に特定することとなった。
 協議事項(3)の「研究課題の重点化及びその内容に関すること」については,内水面において重要問題となっている外来魚(①ブラックバス,②ブルーギル)問題,③アユの資源管理,④アユの冷水病,⑤希少魚対策,⑥カワウ対策,⑦河川湖沼環境の保全対策のそれぞれについて,現在の取り組み,研究の到達点,平成15年以降の対応方針について資料をもとに説明があり,協議の結果了承された。平成15年度については部会等でより具体化するとともに,ワーキングループを設置し,プロジェクト研究の課題化・事業化を図ることとなった。協議事項(4)研究成果に関することについては,10課題提出された14年度研究成果については,1件づつ提出機関等から説明され,質疑応答を経て,内水面関係試験研究推進会議として了承された。また,手続き変更により,漏れているものが或る可能性があるので,それについては事務局から内水面機関に連絡し,提出していただき,内水面利用部でブラッシュアップすることで合意された。
以上,本回の推進会議では,連絡・会議の進行についての事務局の不手際に関する指摘,及び推進会議のあり方等,会議において,多くの建設的な意見をいただいた。それらの意見を,内水面水産業の振興のための研究戦略を図るために活かしたいと考えている。今後もご協力,ご鞭撻をお願いしたい。
(内水面利用部長)

Manabu Shiroisi
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