中央水研ニュースNo.32(2003...平成15年7月発行)掲載

【研究調整】
中央ブロック水産業関係試験研究推進会議について
中野 広

 標記の会議は,平成15年1月9日午後から10日午前にかけて,中央水研にて,27機関,66名の参加により開催した。本会議では,通常の報告事項・協議事項に加えて,本会議が戦略会議との立場から,共通問題である「人材育成」を取り上げ協議をした。
 主催者から「本会議が競争的資金の獲得,情報交換,連携協力強化,人材確保等の様々な事項について検討を行い,外部から目に見える形にしたい」との挨拶があり,また水産庁増殖推進部長から「地域の連携協力が重要で,技術開発の成果,科学技術の成果を基に水産施策の遂行に繋げることが重要」との挨拶があり,議事に入った。なお,本会議には,北村直人農水副大臣が飛入り参加され,「行政は食の安全・安心をスローガンとして掲げている。水産庁はTACにより魚の安定供給を目指し,そのためには海洋環境保全が重要で,研究成果が反映され,国民のためになる行政が実現することを願う」と挨拶があった。
 報告事項では,中央水研から,最近の科学技術・水産業及び水産研究をめぐる情勢,昨年度の推進会議のフォローアップ,各部会報告を行った。また,都県から,水産業・水産研究情勢について報告され,「漁業生産額に減少,漁業者の減少と高齢化,水産研究関係予算の大幅減少,新規採用がなく職員数の減少,地域の研究機関の統合」等,厳しい状況が明らかとなった。
 協議事項のうち(1)「水産研究・技術開発戦略」の達成状況の分類・整理については,構成機関から提出された研究課題を「戦略」に照らし分類整理した事務局案を,協議後,了承された。(2)研究課題の重点化事項については,「プロ研課題化」「沿岸定線」「極沿岸海洋環境と定着性資源」のワーキングループ(以下,WG)に関して,部会の協議結果が報告され,「プロ研課題化」WGは「ブリ」に絞り課題化すること,「極沿岸海洋環境と定着性資源」WGでは共同研究契約の締結と共同研究を実施すること,「沿岸定線調査」WGについては,科学上及び水産上の視点からの理論化すること等で合意され,何れもで引き続き論議を深化させることとなった。(3)研究ニーズについては,部会から推進会議に提案された3事項について論議された。東京都水試より,キンメダイに関して,「伊豆諸島周辺海域で獲られている本種がこの海域だけでの完結資源か否か,都県が参画して調べる必要がある」との提案理由の説明があり,協議の結果,資源回復計画の検討対象種で,重要魚種でもあることことから,漁業資源部会案で,部会においてWGを立ち上げて検討を進めることとなった。また,千葉県等のアサリ漁場を有する県から資源が減少している現状が報告され,「アサリ資源回復に向けた具体的研究・事業実施体制の確立」について協議された結果,海区水産業研究部会の「沿岸浅海域」WGの中で対応するという部会案が了承された。最近の,ブロック内での異常海洋現象や油流出事故等に対処するための情報交換の場としてメールによる掲示板を作成するとの提案が了承された。(4)平成14年度研究成果情報については,各都県から18件提出され,1件ずつ提出機関からの説明,質疑応答を経て,全て中央ブロックの成果として了承された。(5)今回の推進会議では「各機関における人材育成と連携・協力」について,特に時間をとり,協議を行った。予め中央水研所長より,「人材確保と育成は表裏一体であり,人材の確保や予算が厳しい状況で,より一層人材育成が重要となっている」との考え方等の冒頭説明があり,予め構成者等にお願いしたアンケート結果の取り纏め結果をもとに,学会等への参加等の各都県の人材育成についての取り組み,人材育成上の問題,ブロックにおいて取り組むべき事項等の事項について自由討議を行った。この中で,①各機関ではキーパーソンの確保等,人材育成や確保に努力されていること,②ブロック内における情報交換・技術交流の重要性,③共同研究,研修会,推進会議の部会やWG等を通じた研究職員の育成,人材確保が重要であることを確認した。  以上の様に,14年度推進会議は,部会への付託事項,部会からの提案事項についての協議,重点検討事項として「人材育成について」の協議等,本会議-部会-研究会・WG等,それぞれの役割と機能を明確にし会議を進めたこともあり,構成者の推進会議の役割に関する理解が進んだこと,持ち方については,研究内容に係る事項については部会では時間を充分とり,分野での具体的な方針討議の場にして欲しい等の意見が出された。平成15年度については,部会をより活性に取り組みたいと考えている。宜しくお願いしたい。なお,推進会議の具体的内容については,中央水研のホームページに掲載しているので,そちらを参照願いたい。
(企画連絡室長)

Hiroshi Nakano
back中央水研ニュース No.32目次へ
top中央水研ホームページへ