中央水研ニュースNo.32(2003...平成15年7月発行)掲載 | |
【研究調整】
中村弘二
同会議は,水産庁の委託を受け,平成15年2月6日(木)の午後に,18機関の代表,27名を集めて,中央水産研究所(以下,中央水研)講堂で開催した。 冒頭,主催者として中村保昭中央水産研究所長から,食の安全・安心の問題があり,利用加工分野の研究がますます重要になっている,産官学連携を推進して研究を進めて欲しいとの挨拶があった。 次いで,来賓として中山博文海洋技術室長が水産庁増殖推進部長の挨拶を代読し,水産加工業の置かれている厳しい現状に触れ,活性化のために本会議が実りあるものであることを期待すると述べられた。 報告事項として,水産加工業を巡る全国の情勢把握を行った。 企業側から,理研ビタミン川崎満康食品素材開発部長が民間企業動向,とくに食の安全・安全を廻る状況について説明された。例として,アレルゲンを取り上げ,原材料取引上,素材中にアレルゲンがないことを証明することが求められ,その説明に膨大な資料作成を必要とし,四苦八苦していると述べた。こうした要請に丁寧に対応しないと,消費者の信頼を確保できないと言うことで,食品業界の負担が増加していることが報告された。 各県の情勢について,6ブロック幹事から話があり,厳しい水産加工業の現状が浮き彫りとなった。また,漁業生産の落ち込みから原材料の手当てに難渋しているとの発言があった。その他,品質基準の策定,とりわけ官能評価基準のマニュアル化が必要との意見や,食の安全などの問題等が述べられた。 東京水産大学和田俊教授が大学の動向について報告した。来年には独立行政法人化ということで,研究方向を大きく転回する。具体的な中身は整理中だが,学際的研究ばかりでなく,実学にも目を向けざるを得なくなる。中央水研の利用加工部門と研究課題がバッティングする可能性があることが指摘された。 中央水研利用加工部門からは,平成14年度の研究活動を報告した。食の安全に関する課題が増加し,社会的ニーズの高まりを反映していることが説明された。 協議事項では,水産加工業を附活化するために,部会からの提案事項等をふまえて議論された。 最初に,水産庁の「水産研究・技術開発戦略」に基づき公立研究機関,中央水研の研究課題及び成果の整理した結果が報告され,了承された。続いて部会からの4協議事項について,報告・協議があり,今後の方針が決定された。 一つは,前年に設置された勉強会の4グループの活動報告が池田利用化学部長よりあり,今後の展開方向が議論された。「イカ新需要開拓のための技術開発」グループではすでに一部,水産庁加工課と中央水研で協議し,課題化することになった。「水産加工廃棄物の創資源化技術開発」グループでは問題点が絞られ,平成15年度に課題提案をする方向にある。「腸炎ビブリオ対策など魚介類の安全性確保技術開発」グループでは,県に有害微生物専門家が少ないなど困難な面があるが,関心も高く,課題化に向けて対応することになった。「美味しい養殖魚作りと超鮮度保持技術の開発」グループでは論議すべき事項が多々あることが明らかになった。推進会議での議論も課題化すべきということで一致しているが,その内容について直ちに一本化は無理で,勉強会を継続する中で集約してはどうかという意見であった。以上の議論経過を「部会」へ投げ返すことになった。 二つ目は,事務局から「全国水産加工品総覧」出版事業の経過報告があり,了承された。 三つ目は,「企業・団体部会」から,消費者からの苦情も含め意見提示への対応が必要との提案があった。趣旨は食の安全が問われている中で,消費者からの疑問,質問,問題提起に的確に答え,消費者の信頼性確保が水産加工業の維持・発展のために重要になっている。こうした問題は一企業,一組織での対応には限界がある。水産業全体で考えるべきだとの意見である。協議の結果,推進会議で扱うべき問題であり,中央水研が事務局となり,産官学でWGを作り,「具体的に何をすべきなのか」,「何ができるのか」を議論し,平成15年11月に開催予定の次回部会で報告することになった。 四つ目は,利用加工関係情報の整備について,中央水研は,主体的に中央水研ホームページの利用加工関係ページの充実させると共に,各県,各組織のHPをリンクし,全体として有効に機能するよう整備していくことを報告し,了承された。 その他,水産研究成果情報の採否についての協議が行われた。公立研究機関の協力で11件,その内中央水研から2件提出があり,普及すべき成果として了承された。とくに,低・未利用資源活用のための加工技術に関する報告の中に優れたものが多かった。 (加工流通部長)
Kouji Nakamura |