中央水研ニュースNo.31(2003...平成15年3月発行)掲載

【研究調整】
平成14年を振り返って
(独)水産総合研究センター中央水産研究所の主なできごと
-中央水研の十大ニュース-
中村保昭

 独立行政法人化2年目,平成14年の(独)水研センター中央水産研究所での主なできごとを振り返って「十大ニュース」として整理してみた。
  1. 柔軟な研究体制への試行[(独)水研センターとして初の研究チーム制の導入]
      ノリゲノム関係事業を水産庁から受託。DNA関連機器整備による水産ゲノム解析研究体制強化。施設等の整備の困難を克服した。本部・中央水研の総務関係を含めて,総力をあげて対応。企連室付きのチーム制を導入し,事業を実施した。
  2. 緊急対応への機敏な対応(油流出事故等,突発事故への対処)
     中央ブロック関連水域〔薩南(鹿児島県:太平洋側)~常磐(茨城県)〕で油流出事故多発。対策委員会を設置し,都県への協力体制を構築した。主な事故は次のとおり。いずれにおいても平成9年日本海ロシア船籍ナホトカ号油流出事故の対応を参考とした。
    鹿児島県志布志湾(パナマ船籍貨物船「コープ・ベンチャー号(36,080トン)」座礁:7/25)
    静岡県御前崎沖(韓国船籍貨物船「サントラス号(2,747トン)」衝突・沈没:8/8)
    伊豆大島(バハマ船籍「ファル・ヨーロッパ号(56,835トン)」座礁:10/1,火災:11/26)
    茨城県日立港錨地(北朝鮮船籍「チルソン号(3,144トン)」座礁:12/5)


    炎上するファル・ヨーロッパ号
    (11/26,石油連盟ホームページより)
  3. 広報等活動の強化(参議院農林水産委員会が本部・中央水研を視察)。
     所の研究紹介,配布資料「研究のうごき」,及び中央水研ピンバッチ好評(「研究のうごき」は水産庁でも好評)。ホームページに「研究のうごき」として掲載,プレスに投げ込み。その他納税者への成果の還元,若者の理科系離れ対策への一助とした。  
    一般公開
    本所(蒼鷹丸含む):10/27
    横須賀(海区水産業研究部):7/20
    高知(黒潮研究部):7/20
    上田(内水面利用部):8/30

    横浜庁舎一般公開の様子(10/27)

  4. 調整機能の強化(水試も水研も活性化・成長する水産業関係試験研究推進会議へ)
     中央ブロック水産業関係試験研究推進会議部会に設置された「WG」及び水産利用加工関係試験研究推進会議部会の「勉強会」において,競争的資金獲得に向けての戦略会議としてプロジェクト研究の課題化等の論議を進展させた。ブロックのニーズを踏まえ,問題解決・地域完結,ブロックの活性化を図った。

    平成14年度中央ブロック会議の様子(1/9)
  5. 国際化への寄与(国際共同研究,海外派遣,外国要人来所,外国研修生の受け入れ等)
     所長をはじめ,多数の研究職員がJIRCAS,SEAFDEC,OECD水産委員会等に派遣した。積極的な国際協力。また,エルサルバドル農牧省副大臣(11/25),ペルー国立海洋研究所長(7/9),中国水産科学研究院長(12/16),中国西安市水務局長(12/16)等,外国の高官及び多数の外国人が当所を視察あるいは研修を受講。UJNR(天然資源の開発に関する日米会議)を当所で開催(10/16-17),関係者が奮闘した。
  6. 産官学の連携強化(共同研究の推進)
     神奈川水産総合研究所との総括的共同研究契約の締結(8/9),「海藻から分離した乳酸菌を用いた大型海藻の単細胞化・発酵技術の展開」等,民間・県との共同研究を相次いで実施した。また,特許もこの1年間に4件を申請した。
  7. 受 賞
     バフンウニ生殖巣の新規苦味成分の探索,精製,構造決定などの一連の研究により,日本水産学会奨励賞を受賞(利用化学部村田裕子主任研究官,4/5)。

    受賞式の様子(4/5)

  8. 海洋調査に快挙
     当所漁業調査船蒼鷹丸(892トン),北海道日高舟状海盆(40-35.7N,144-34.7E)水深7,490mにおいて最高水深採泥に成功した(7/22)(海底放射能測定資料)。

    漁業調査船 蒼鷹丸

  9. 研究の深化(プロジェクト研究等の一層の推進)
     マイワシ,マサバの再生産成功率と海洋変動との関連を解明,レジームシフト(気候・海洋等の状態移行)と浮魚類の資源変動との関連に関する研究において成果を挙げた。また,「地球環境温暖化が農林水産業に与える影響の評価及び対策技術の開発」の地球温暖化関係,「種判別・産地判別」等の「食の安全・安心」関係等,関心が持たれているプロジェクト研究や事業を積極的に推進した。
  10. 社会問題への果敢な挑戦(内水面生態系保全,外来魚対策の深化)
     ブラックバス,ブルーギル,キャットフィッシュ等の外来魚,カワウ対策等の研究需要への積極的対応。ブラックバスの駆除方法の開発等,研究成果の産出するとともに。ブルーギルに関する研究を推進した。

    ブルーギル

(所長)

Yasuaki Nakamura
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