中央水研ニュースNo.30(2002...平成14年11月発行)掲載

【研究調整】
平成14年度中央ブロック水産業関係試験研究推進会議
海区水産業研究部会報告
靍田 義成

 平成14年12月19日,中央水研において,中央ブロックの沿岸資源・増養殖研究分野の責任者を中心に20機関41名の参加をえて表記部会が開催された。
 本会合の役割は,中央ブロック水産業関係試験研究推進会議の下部組織の一つとして,ブロック内の研究ニーズ等下記事項を整理し,その解決策を親会議へ提案し,また親会議から付託された事項をWGを設置する等して対処することである。①水産庁が策定した「水産研究・技術開発戦略」の達成状況,②重点を置くべき研究内容,③試験研究機関との連携分担の協議及び調整並びに共同研究,④試験研究の成果,⑤研究ニーズ,⑥他の推進会議との連携。
 平成14年度の部会は,まず主催者である中央水産研究所長から「水産業は厳しい現状にあり,現場からの要請に限られた人的資源・予算で対応せざるをえない現実では,研究の重点化と役割分担を図り,共同研究の一層の推進が必要であること,海区水産業研究部会は専門分野の責任者が構成者,地域における問題を取り扱う部会であるので専門家として推進会議に提案する事項を論議して欲しい」旨の挨拶があった。その後,①試験研究の内容とその成果,②「水産研究・技術開発戦略」の進捗状況,③中央ブロック海区水産業研究部会の活動,④新たに取り組むべき課題,連携・調整が必要な事項等,⑤研究成果情報,の5つの議題について検討した。ここでは3)と4)について報告する。

 ワーキンググループ(以下WG)の活動について
 中央ブロック海区水産業研究部会には,アワビの増殖に係わる諸問題を取り扱う「アワビ研究会」(平成12年度設置)と「沿岸浅海域の環境変動が定着性水産生物の生産性に及ぼす影響の評価に関する調査・研究手法の検討」WG(平成13年度設置)の2つの下部組織があり,両会の平成14年度の活動の報告と,下記の計画案を親会議へ提案することが承認された。

  • アワビ研究会:平成15年3月6日に開催,従来の勉強会的な内容に加え,具体的にテーマを絞り,共通の研究課題を企画する。
  • 「沿岸浅海域WG」:都県関係機関とメールと3回の会合により取りまとめた調査実施計画案(海洋環境・基礎生産力調査,アワビ・大型褐藻類の生物調査,8都県参加)を4月までに各県の実情に合わせ微修正し,平成15年4月から共同調査・研究を開始する。開始に当たり,調査参加都県と中央水研とで共同研究契約を取り交わす。調査結果については平成16年2~3月に検討会を開催する。また,沿岸浅海域の海洋環境は短期的に変化することから連続的データが必須である。このため,水温,塩分,クロロフイル,光量子量の測定器を搭載した自記観測機(2セット300万弱)を関係各機関が整備するよう要望する。

 新たに取り組むべき課題,連携・調整等について
 各県から提出された研究ニーズを議論した。その結果,部会からWGへ指示する事項等として下記の通り確認され,推進会議に提案することになった。

  • アサリ資源の減少原因の解明と回復技術開発について(千葉,愛知,三重,高知の4県):部会に設置されている「沿岸浅海域WG」の中にアサリグループをつくり,今後の取り組み計画等を検討する。
  • 藻場の機能・修復等について(神奈川県,和歌山県,高知県):和歌山県及び高知県が提案した事項については,「沿岸浅海域WG」の共同研究の中で対応する。
  • 栽培資源の評価・管理手法の開発について(鹿児島県):課題化等を含め経営経済部と検討する。
  • クラゲの大量発生の原因究明と防除対策について(静岡県):他ブロックからの情報を得て,水研センター本部へあげるなどで対応する。
  • ノリの病気に関する問題について(愛知県):養殖研究所へつなぐ。
  • 海洋深層水について(高知県):高知県の藻場WGとの関係が強いのでその中で対応する。
 近年,沿岸漁業は多くの問題点を抱えており,それらへの対処の一つとして,これまで水産庁の都道府県助成事業等の予算を獲得して都県研究機関は研究を続けてきた。しかし,これらの研究予算も,より一層競争的側面が強い事業(例えば,先端技術等を活用した農林水産研究高度化事業等)へと衣替えした。このため,これまで水産庁と都県との橋渡し的機能を果たしてきた海区水研は,今後,ブロックのオーガナイザーとしての役割がより一層求められてきた。ブロックの研究者が互いの資質を向上させ,連携協力して課題化しないと,予算獲得が難しい状況にある。新年度から走り始める共同研究を通して,問題解決と予算獲得に向け努力する所存であり,これからも都県研究機関の皆さんの協力をお願いする。
(海区水産業研究部長)

Yoshinari Tsuruta
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