中央水研ニュースNo.31(2003...平成15年3月発行)掲載 |
【研究調整】
平成14年度中央ブロック水産業関係試験研究推進会議海洋環境部会
入江 隆彦
平成14年12月18日13時30分~17時に中央水産研究所(以下中央水研)講堂において,中央ブロックの19機関39名の参加を得て海洋環境部会が開催されました。中央水研中村所長の挨拶に引き続き,中野企連室長が資料に基づき,科学技術基本計画,21世紀初頭の海洋政策等,最近の水産業・水産研究をめぐる情勢について説明し,その後,推進会議における部会の位置付け等が確認されました。 「試験研究の内容とその成果について」:水産海洋研究課題の整理表に基づき,各機関から14年度の試験研究課題の実施内容とその成果が簡単に説明され,質疑応答が行われました。 「水産研究・技術開発戦略の進捗状況の整理について」:水研から研究戦略に基づく研究課題の整理表と進捗状況に関するコメント案を提示・説明し,基本的に了解を得るとともに,課題別の分類に関して変更等がある場合は追加・修正することとしました。 「沿岸定線調査等検討ワーキング・グループの検討経過と今後の方向性について」:昨年の海洋環境部会での各県からの要望を受け,推進会議で設置が承認された「沿岸定線調査等検討WG」の検討経過を報告,さらに,今後の取り組みについて提案・論議が行われ,以下の内容で賛同を得ました。①沿岸定線事業は各県とも全国対応の一端を担って調査を継続しており,ブロック全体で対応して行く。②沿岸定線調査,資源と海洋との関係についての成果等を一般に分かりやすい形で示していく必要がある。③中央水研から定点の水温の長期時間変動図例を示し,これらの解析結果等からなる「海洋環境基本図集」を作成することを提案,そのための各都県・全測点・各層の水温データの提供。④水研から,高知県の事例に習い地先海域の資源と海洋との関係について分かり易い解説書を作成することを提案した。⑤沿岸域の漁場環境の把握は,国民に安全な水産物を安定的に供給するために,資源の保全管理と同様に国の責務であり,海洋環境調査は国の委託事業として再構築することを水産庁,水研センターに対して強く要望する。このことに関連して水産庁漁場資源課から,15年度の海洋環境調査は,資源評価に結び付く海洋情報の収集を出口に,浅海定線,沿岸定線調査等を含め新しい枠組みで補助事業として実施される予定で,予算的にもほぼ昨年並みの額が確保される見通しである旨の情報提供がありました。 「新たに取り組むべき課題,連携・調整が必要な事項について」:中央ブロックとして新たに取り組むべき課題について論議し,以下の内容で対処することが確認されました。①黒潮を斜めに横断する冷水ストリーマの構造解析と生物輸送に関する基礎調査(和歌山県):冷水ストリーマの出現時期・海域等について和歌山県に更に情報収集,整理していただき,共同調査等が可能かどうかを検討したい。②衛星情報の漁海況調査等への活用(静岡県):NASDAと水研センター等との間に共同研究契約が交わされており,その活動を通して対応する。③‐(1)黒潮流路変動要因の解明と予測手法の検討,(2)定線調査事業の見直し充実(神奈川県):長期漁海況予報会議海況分科会で中央水研と都県が協力し,取り組んでいる。定線調査については沿岸定線調査等検討WGで検討している。④マイワシ資源変動と東海海域の海況変動との関係について(愛知県):愛知県の解析結果に期待しており,好結果が得られれば中央ブロックとして資源予測に活用したい。さらに,連絡・調整が必要な事項等については,①中央水研より中央ブロック全体の公的連絡網としてインターネット上に「掲示板」を設置することを提案し,了承されました。②中央水研より「黒潮の資源海洋研究」誌を中央ブロックの刊行物として継続することの適否を諮ったところ,継続が支持されました。③中央水研より中央ブロック資源・海洋研究会内規について第8条を削除し,研究会は高知(部会は横浜)で開催することを提案し,了承されました。 「研究成果情報について」:提出された成果情報については中央水研からコメントを返送し,修正の上,推進会議に提案することになりました。 海洋環境部会は昨年発足し活動を開始したばかりですが,沿岸定線調査等検討WGを通じた活動をきっかけにブロック内における意見交換が活発化し,今後も沿岸定線調査データの活用等を通してブロック内の連携・協力が進むものと期待しています。部会傘下の資源・海洋研究会の活動をはじめ,部会の運営に関して今後とも関係研究機関のご協力,ご支援をお願いいたします。 (海洋生産部長)
Takahiko Irie |