中央水研ニュースNo.30(2002...平成14年11月発行)掲載

【研究調整】
我が国周辺水域資源調査等推進対策委託事業推進会議「中央ブロック資源評価会議(海区水産業研究部)」について
堀井 豊充

 中央水産研究所では生物生態部,黒潮研究部および海区水産業研究部が我が国周辺水域資源調査等推進対策委託事業による資源評価を実施しており,このうち海区水産業研究部が担当している魚種系群に関して,平成14年8月1~2日,中央水産研究所3階第1,2会議室において標記会議を開催した。参加者は中央ブロック内都県の担当者25名,水産庁4名,農水省および農政局の水産統計担当者6名,水研本部1名,中央水研10名の計46名であった。
 主催者(中央水研所長)および水産庁の挨拶に続き,1日目は関係各都県から沿岸資源動向調査対象種の調査結果に関する詳細な説明が行われた。さらに2日目には中央水研が作成した平成14年度資源評価報告書(案)について検討が行われた。
 海区水産業研究部では昨年度までマダイ太平洋南部系群および中部系群,ヒラメ太平洋南部系群および中部系群の2魚種4系群の資源評価を実施してきたが,平成14年度に伊勢・三河湾の小型機船底曳網漁業対象種が資源回復計画対象種となったことにともない,トラフグ伊勢・三河湾系群(資源回復計画のTAE対象種),シャコ伊勢・三河湾系群およびマアナゴ(伊勢・三河湾小型底曳網漁獲対象)の3魚種が新たに評価対象種に加わった。評価対象種別に主な協議内容を以下に記す。
1)マダイ太平洋南部系群(低位・減少)
 近年若齢個体の加入が見かけ上少なくなっている理由について,再生産成功率の低下によるものか,または小型魚の保護対策等が進展していることによものかとの質問があった。それに対し「小型魚に対する漁獲強度が低下してきているのは事実と思われるが,近年の資源量の減少傾向は加入量そのものが低下していることを示唆している。」との回答があった。
2)マダイ太平洋中部系群(高位・増加)
 本系群は漁業と遊漁の漁獲量がほぼ拮抗しているのが特徴的である。放流個体の資源添加効率(推定値)が他系群と比較して高い理由について質問があり,「海域特性に加え,中部系群では県水試が関わった計画的な放流が継続実施されていることも理由のひとつであろうと考えられる。」との回答があった。
3)ヒラメ太平洋南部系群(中位・横ばい)
 漁獲量ベースでのABC算定を行ったことについて,管理目標が資源量の維持にあるか,または漁獲量の維持にあるかの整理をする必要性が指摘された。漁獲の動向からみて資源量水準が低下しているとは認められないことから,漁獲水準の維持が目標となる。
4)ヒラメ太平洋中部系群(中位・横ばい)
 コホート解析において直近年の漁獲係数を算出した方法を明記する旨の指摘があった。
5)トラフグ伊勢・三河湾系群(中位・横ばい)
 最大の問題は成長乱獲にあることから,漁獲開始齢とYPRとの関係を分かりやすく示すべきであるとの指摘があり,図示することとした。なお本系群では資源回復計画の一環として,伊勢湾で10月に漁獲された当歳魚の再放流を行うこととしている。
6)シャコ伊勢・三河湾系群(低位・横ばい)
 現在資源水準が低位にある原因として想定されるものは何かとの質問があった。原因は不明であるが,春期産卵群の減少と資源水準の低下との間に何らかの関係があるものと推定された。
7)マアナゴ(伊勢・三河湾小型底曳網漁獲対象)(中位・減少)
 我が国沿岸で漁獲されるマアナゴの系群構造は明らかになっていないため,ここでは評価単位を伊勢・三河湾小型底曳網漁獲対象とした。レプトケパルス期の漁獲規制に関する質問が出されたが,これについては今後の検討課題である。
 上記の質疑のほか,統計情報部より栽培対象種であるマダイ,ヒラメについては四半期毎の漁獲統計が発表されることとなった旨の報告があった。
 これら魚種系群の資源評価に用いた基礎資料は,関係都県の水産試験場の研究者らが早朝,深夜をいとわず水揚港に足を運び,漁業者や市場関係者らと接しながら収集した極めて貴重なデータである。関係各位にあらためて心よりお礼申し上げるとともに,その労力が無駄にならないよう,今後ともよりレベルの高い報告書の作成を心がける所存である。
(海区水産業研究部 沿岸資源研究室長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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