中央水研ニュースNo.29(平成14年7月発行)掲載

【研究情報】
村田主任研究官 日本水産学会賞(水産化学)奨励賞を受賞
池田 和夫

 利用化学部素材化学研究室の村田裕子主任研究官が,本年4月に「バフンウニの苦味成分に関する研究」で日本水産学会賞(水産化学)奨励賞を受賞されました。
 氏は,福島県から「福井県以南の日本海沿岸および九州地方で商品価値の高いバフンウニが,東北地方では生殖巣に強い苦味を有する個体が多くみられるため,ほとんど漁獲対象とされていない。その上,しばしば海藻を食い尽くして磯やけを引き起こすため,駆除対象でしかない。このようなバフンウニを有効に利用したいが,そのためには苦味の原因物質を解明したい,」との相談を受け,この研究に着手しました。
 まず,苦味が成熟した卵巣に特異的なことに着目し,成熟卵巣から苦味物質を単離して,これが新規含硫アミノ酸であることを突き止め,プルケリミン(pulcherrimine)と命名しました。と,書けばほんの数行ですが,ひたすら苦味を確認しながら精製し,得られた物質が苦味の本質であることを証明し,またHRFAB-MSやNMRなどを用いて詳細に検討して化学構造式を決定するという気の遠くなるような研究を続けた訳です。
 また,分析法を開発して,福島県いわき地方の成熟個体の割合と生殖巣中のプルケリミン含量の季節変化を調べ,プルケリミン含量は卵巣の季節変化と関係があり,いわき地方には周年にわたってプルケリミンを有する成熟個体が生息することが漁獲を困難にしている原因の一つであることを示しました。
 この化合物の苦味については,ヒトによる官能検査で閾値と苦味効果を調べただけでなく,マウスを用いた条件付け味覚嫌悪学習行動実験を行って,通常の食用ウニの風味としての苦味に関与している既知の苦味アミノ酸とは異なり,フェニルチオ尿素や硫酸マグネシウムなどの含硫苦味化合物と味覚類似性が高いことを明らかにしました。
 これらの一連の功績が認められ,本年の受賞となったわけですが,ご指導頂いた先生やご協力頂いた研究者の方々に恵まれたことも,氏の受賞につながっていることは申すまでもありません。今後は,バフンウニの有効利用を目的とした応用的・現場対応的研究と,主要成分の味覚機能に関する基礎的研究という両面から進めていきたいというのが氏の希望でありますので,これまで同様のご指導ご支援をお願いいたします。
 本年の受賞を1つの節目として,更なる飛躍を期待しています。
(利用化学部長)
参考
受賞の様子

Kazuo Ikeda
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