中央水研ニュースNo.29(平成14年7月発行)掲載
【研究情報】各部の平成13年度の活動と平成14年度の方針

[加工流通部]
美味しい水産物をつくる
中村弘二



 加工流通部では,水産物を食品などとして有効に利用するための研究に,部長ほか9名の研究者で取り組んでいます。近年問題になっている食品の安全性も当部の研究課題です。
 人は,紀元前から何千年という年月を掛けて各地で固有の食文化を築き上げてきましたが,近年,BSE(狂牛病)に見られるように,従来の常識を覆すようなさまざまな有害物質の存在が明らかになるにつれ,消費者の間に食品の安全性に対する疑問の声が上がっています。こうした状況を受け,農林水産省を先頭に関係者は食品の安全性確保のために,さまざまな施策,業務の改善に着手しつつあります。水産部門では,従来,こうした問題を水産物の高品質化ということで対応してきましたが,最近,安全性そのものを前面に出して取り組もうとしています。当部では本年度全21課題のうち安全性に関わる研究は7課題でしたが,次年度はさらに2つ増やすことにしています。
 利用化学部と加工流通部は,漁獲後の利用を考え・研究する研究部です。そうしたことから,両部は,水産庁の委託を受けて「全国利用加工関係試験研究推進会議」を開催し,全国的な水産利用加工研究の展開を図っています。平成13年度は,新しい課題の掘り起こしのために推進会議の中に4研究会を立ち上げたところで,その議論の成果を期待しているところです。今後,両部は全国対応基盤的研究部門として,地方のさまざまなニーズを吸い上げ,課題化,研究することにより,消費者の信頼確保,水業業の振興を図っていきたいと考えています。
 昨年度の成果の一端を紹介しますと,加工技術研究室では,漁獲後の肉質軟化現象の解明に取り組んできました。軟化は様々な酵素によって引き起こされることから,漁獲直前に体液に分解酵素阻害剤を灌流させるという斬新な解析方法を使い,何処で,どういう酵素が働いているかを特定する実験が行われています。
 品質管理研究室では,加工工程中の生体成分や有用成分の動向に関する研究を実施しています。良質のタンパク質基材であるすり身に有用脂質を微粒子化することにより取り込ませることに成功し,今後の高齢化社会に対応した新しい高栄養食品の開発につながる技術として有望視されています。
 食品保全研究室では,食品の安全性確保の観点から海洋性食中毒細菌の動態把握,高感度迅速測定に取り組んでいて,結果MPM-PCR法を使うことにより,感度の向上,省力化を可能にしました。
 こうした研究活動は,13報の学会誌論文,11報の公刊図書記事,21報の研究報告として取りまとめられ,一部の成果は特許として出願中,3件,です。学会で18の研究発表を行い,支部評議員,企画広報委員,日本水産学会70周年記念国際シンポジュウム企画委員などとしても学会活動に携わっています。5つの大学,3つの国公立研究機関,2つの民間会社と共同研究を推進しているほか,東京大学,東京水産大学の連携大学院教官として教育機関の運営にも参画しています。ハーバード大学や上海水産大との共同研究のほか,JICAの研修及び各種活動への参加を通じ広範な国際貢献を図っています。平成13年度は,科学技術特別研究員2名を加え,受け入れた研究者は12名に達しました。
 平成14年度は,行政施策への貢献,積極的な各種活動への参加に加えて,継続課題については一層の研究の発展を図るとともに,食品の安全性確保といった社会的要請も考慮して,新しい研究課題を掘り起こし,意欲的に取り組みたいと考えています。
加工流通部長

Kouji Nakamura
back中央水研ニュース No.29目次へ
top中央水研ホームページへ