中央水研ニュースNo.29(平成14年7月発行)掲載
【研究情報】各部の平成13年度の活動と平成14年度の方針

[海洋生産部]
連携・協力の強化
入江隆彦



 平成13年度の成果:海区共通基盤研究部門として,漁業生産の基礎となる海域の基礎生産力に関する研究や低次から高次に至る物質循環の研究を中心に,平成13年度は経常研究4課題,プロジェクト研究19課題,シーズ研究1課題を実施しました。この中では,御前崎沖の定線観測により海洋の物理構造,基礎生産,プランクトン量を季節別に把握する調査を継続実施するとともに,国の要請に基づき,我が国周辺海域の海底土や魚類の放射能レベル及びバックグラウンド値の把握による放射能汚染の監視など全国対応的な研究を継続実施しています。また,プロジェクト研究等に取り組む中で,「MVP(走航式自動連続鉛直観測システム)による黒潮続流中層の海洋鉛直構造の観測」,「自然蛍光と基礎生産力の関係解明による自然蛍光高度計を利用した生産力の見積もり手法の開発」,「核酸比の微量定量による小型カイアシ類再生産力の見積もり手法の開発」,「PICES標準生態系モデルNEMUROの三次元モデルへの拡張」など,海区の研究に役立つと考えられる手法の開発,手法の標準化などを積極的に進めてきました。さらに,平成13年度には神奈川県下の漁業者・水産試験研究機関からの要請を受けた海区水産業研究部と共同で,所内プロ研として「カギノテクラゲの毒性・分布生態の解明と分類・生活史の再検討」に初めて取り組み,現在も試料の採取,調査を続けています。近年注目されるようになってきた森と川と海の関係に関連する研究として,「林地・農地から水域への環境影響物質の負荷過程の解明」に取り組み,陸上からの土壌流失による沿岸域へのリン負荷量,影響等に関し着実に知見を蓄積中です。成果の発表は,学会誌9報,公刊図書6報,その他の報告20報,口答発表17報等により行った。委員等では,海洋科学連絡会委員(日本学術会議)をはじめ,海洋放射能検討委員会委員(海洋生物環境研究所),地球科学技術フォーラム委員(地球科学技術推進機構),藻場・干潟環境保全調査事業検討委員(水産庁),生物多様性分野の環境影響評価技術検討委員会委員(環境省)など応嘱した委員は計15件,学会等の委員11件に上ります。また,科学技術振興事業団との共同研究として,水産研究所が長年にわたって調査・収集し,紙ベースで保管されている日本周辺海域の海洋環境,卵・稚仔,プランクトン,及び魚体測定データをデータベース化する事業「日本周辺の海洋環境及び海洋生物データベース」を開始しました。招待された講演等4件,協同研究3件,受け入れ研修者2名,学会等のシンポジウムの企画1件です。水産学会70周年記念ポスターセッションでベストポスタープレゼンテーション賞を受賞(森田貴己)しました。
 平成14年度の目標:海洋物理,海洋化学,海洋生物部門との共同調査,共同研究を継続して実施し,データの取得及び解析の効率化・高精度化を図るとともに,海区の研究に役立つ新手法の開発,標準化などに積極的に取り組む。資源研究部門との連携を強化し,マサバの資源予測等の具体的課題で協力して問題解決に当たります。黒潮研究部と連携・協力して,ブロック推進会議海洋環境部会等で論議になった沿岸定線調査等の問題に積極的に取り組みます。国民生活の安全に関わる放射性物質や地球環境に関与する化学物質のモニタリング体制を維持するよう努力します。当部の研究評価部会で外部委員から出された地方水試への成果の還元,実用面での活用,研究の指導等の要請を念頭に置きながら進めて行きます。
海洋生産部長事務取扱

Takahiko Irie
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