中央水研ニュースNo.29(平成14年7月発行)掲載
【研究情報】各部の平成13年度の活動と平成14年度の方針

[海区水産業研究部]
定着性資源を増やす
靍田義成


 海区水産業研究部は,増養殖の対象となるアワビ,ヒラメを中心に,黒潮域の水産資源の維持・増大に向けて,生物特性の解明と漁場利用を含む資源管理に関し,4つの経常的課題と2つのプロジェクト研究,5つの委託事業を担当しました。
 主な成果として,アワビ類については,アワビ親貝の産卵機能低下の有無判定の基礎研究として,同一個体を殺さずに組織片を切り取る方法と腹足の血管から血リンパを必要量採取する方法を確立し,2つの卵黄タンパク物質を分離しました。生態的研究では,暖流系アワビ類稚貝が無節石灰藻が繁茂する転石の側面・下面に多く分布し,トコブシ初期稚貝が,8-9月の台風通過後に産卵することを推測しました。ヒラメについては,相模湾のヒラメ底魚群集は,筋肉の安定同位対比を測定することにより,種による食性の相違を類型化しました。その他として,マアナゴのレプトケファルスの耳石輪紋解析から,変態まで77~213日を要し,産卵期が9~11月と推定しました。平成14年度は,アワビの同一個体の成熟サイクルと体成分の関係,野外におけるアワビの発育段階ごとの分布特性と漁場環境の解明.ヒラメ底魚群集内の食物連鎖構造,マアナゴの接岸機構を明らかにし,加入量変動の解明に繋げたいと考えています。
 平成13年度の水産庁関係事業として,マダイ・ヒラメの資源評価報告書と人工礁の低次生産に及ぼす影響調査を担当しました。平成14年度は放流効果を取り入れた資源評価の高度化,資源回復計画対象種トラフグ等の調査研究に取り組みます。
 平成13年度のブロック推進会議海区水産業研究部会で,磯焼け現象やアワビ類等の沿岸地先資源の著しい減少傾向の原因は,沿岸浅海域の生産力の低下,或いは物質循環や生態系の変化によるもので,環境変動がその主な要因と考えられること。複雑な海洋構造が想定される極沿岸浅海域の水温や流況などの微細海洋構造の知見を蓄積し,沿岸生物の生産性への影響を早急に解明し,対策を講じることが必要であることが共通認識となり,WGが設置されました。WGでは,沿岸浅海域の環境変動が定着性水産生物の生産性に及ぼす影響の評価に関する調査・研究手法を検討するために共同(共通)研究課題の企画,立案を行うこととなりました。平成14年度には,幹事県の担当者と各県の問題点を集約・整理し,課題化に向けて夏前に会合を開催する予定としています。また,平成15年度の水産庁の予算化に向けて行政官と連絡をとり具体的に動いています。上記の他に,中央ブロックとして重点的に取り組むべき課題として,クルマエビの漁獲量減少の原因解明,アサリ稚貝の発生機構の解明,の2件が部会で上けられました。これらについては,関係機関と連絡を取り,問題点を整理し,研究助成枠獲得に向けて取り組んでいきたい考えています。今後ともご意見ご協力をお願いします。
海区水産業研究部長

Yoshinari Tsuruta
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